ヴォルパト | ||||||||||||||||||||||||
試飲日 2000年9月26日 | ||||||||||||||||||||||||
ドメーヌ・ヴォルパトのワインをこの国で飲む機会に恵まれた。これは奇跡に近く、関係各位に大感謝である。かつてヴォルパトのワインは、日本の某輸入代理店が取り扱っていたが、ヴォルパトから三行半を突きつけられ、同時に日本での輸入ルートを失った。1993年のことである。その時の事情には詳しくないが、ワイン好きには大方の予想はつく。ワインを愛する気持ちと、商売のバランスの問題であろう。 ある信頼すべき筋からの情報によれば、今日ヴォルパトは3ルート用にしかワインを生産していない。あるレストランと、個人と、自家用である。今回はその自家用のものを有力なコネのもと試飲させていただいた。 ヴォルパトについて補足すれば、彼の造るワインは少ない。このシャンボール・ミュジニーとパストゥグランの2種類がメイン。パストゥグランはピノ・ノワール1/3以上のブレンドでガメイ種主体として造られるが、ヴォルパトのそれにはガメイ種が入っていないというから驚きである。ACブルゴーニュ白も誰かに頼まれて造っているらしい。ヴォルパトのワインを日本で復活できれば、間違いなく商売として成功する。知る人ぞ知るワインだからであるが、昨今のワインブームの影響でその知る人の裾野も広がっているからだ。とにかく現実問題として飲むことは不可能に近く、飲みたくても飲めないワインの代表格である。金の問題ではなく、存在の問題である。 <味わい> うれしく飲めるワイン。ワインが食中酒であることを実感させてくれる。このワインは決してでしゃばらない。静かに食卓を彩るワインである。ふと、おいしさを噛み締められる。おいしい。最近の低温浸漬系とは一線を画し、クラシックな味わいである。 色は熟成感のある茶系の赤。しみじみした色合い。口に含むと微発泡しているかの感触。舌の上でツブツブ跳ねる感じがする。軽いタイプの飲み応えだが、しっかりと酸もあり、今飲んでおいしい。ほこりっぽいジャムを焦がした香は時間と共に醤油を焼いたお煎餅になっていく。普通、ワインの香を表現するときに醤油香は誉める部類の用語ではないが、この極上のお煎餅を焦がした感じは好みである。いままでのワインにはこの香はないだけに、新鮮であると同時に興味も湧く。香が醤油一色になって一口飲むと、味わいにも醤油が出てくるから不思議である。ただこの醤油煎餅風味はワインに求めてもしょうがないのも事実である。お煎餅風味は煎餅をかじれば事足りるからである。 しかし、とあえて言いたい。こんなに個性が強い(味自体は軽く仕上がっているが)ワインに出会えたことが悦びである。シャンボール・ミュジニーの特徴はあまり感じられない軽めのワインではあるが、うまさを充分堪能できた。感謝である。 以上 |