ポール・ガローデの古酒
試飲日 2001年9月15日など
場 所    神奈川県内某所
照 明 蛍光灯
種 類 フランス AOCワイン
生産者 Domaine Paul GARAUDET (Monthelie)      
Vintage 1986
テーマ ポール・ガローデの1986
ワイン Monthelie
Pommard
 

<モンテリー>
 あめ色のやさしい色合いはなんとも心地よい。熟成したからこそ現われる土の色にも似ている。コルク臭が抜けた後にもろみ香がほのかに香る。うまい。角張ったところがなく、肩肘張らずに自然体で年老いたワインは、こんなにもおいしいのだ。力の抜け具合が絶妙で、飲んでいてこちらもほっとさせられる。極上の和食にも合う。ただし若干の酸味と回したとたんに台無しになる繊細な味わいは、誰もがおいしいかどうか否定できない面もある。ブルゴーニュは酸っぱいというイメージを持たれても困るが、ブルゴーニュの古酒に興味がある人にはお勧めの逸品である。酸味の中に残る年老いたうまみ成分を味わってもらいたいところである。おそらくこれ以上は熟成せず、この味わいを数年保ちつつ、静かに静かに土に返っていくのだろう。古酒のおいしさを高くない価格で堪能できる名品である。
 
 このモンテリーは2001年8月までポールガローデのセラーに眠っていたワイン。蔵出しワインの恐るべきパワーを痛感させられなんとも心地よい。モンテリーという特級畑を持たないコート・ド・ボーヌの地味なアペラシオンにして、この熟成感である。ブルゴーニュは早飲みタイプと揶揄される向きもあるが、どっこいこのモンテリーを飲めば、そんな世間の評判などあっという間に消し去られてしまう。さらにうれしいことがある。価格である。1999年のモンテリーと変わらないから不思議だ。10余年の歳月を経たワインと新酒が同じ価格なのだ。ここがモンテリーの哀しさでもあるが、飲み手にとっては超コストパフォーマンスに長けたワインでもある。


<ポマール>
 同じくセラー蔵出し直後のワイン。モンテリーに比べ色合いに力強さを感じる。黒系のルビー色がようやく褐色を伴った茶色になったような趣である。こちらもうまい。力強さが残り、うまみの奥行きを感じることも出来る。まだまだ数年はこのパワーを保つことだろう。モンテリーにあった儚さがこのポマールにもないこともないが、まだまだ筋肉質である。これが格上ポマールの実力なのだ。畑の違いが味わいに残り、それは価格にも反映されている。1.5倍ほどするが、なるほど、その差は確固として存在している。
 それでもルロワの古酒に比べれば半額程度なので、安定のルロワを選ぶのも良しだが、ここはポール・ガローデの実力を大いに楽しみたい。その悦びはルロワ以上かもしれないからだ。


<おまけ>
 ブルゴーニュの古酒は楽しい。完璧な熟成を遂げると、かくもおいしいからだ。あのコント・ラフォンで醸造長を務めた息子の父が造ったワイン。ポール・ガローデという一流の造り手にして、セラー蔵出しの妙と流通過程における適切な保管。こんなワインに出会えると、うれしくって小躍りしたくなるから不思議だ。


以上


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