マーセル・ラピエール
試飲日 2001年9月10日など
場 所    神奈川県内某所
照 明 蛍光灯
種 類 フランス ブルゴーニュ産AOCワイン
生産者 Domaine Marcel Lapierre (Beaujolais)    
Vintage 1999
テーマ ボージョレーといえばマーセル・ラピエール。
ワイン Morgon


<味の印象>
 色は透明感のない紫がかったピンク系の赤。香は煙っぽさがあり、イチゴ系の安らぎを覚える新鮮さが基調。味は果実味に富み、飲みやすく、大変おいしい。極上のボージョレーである。ガメイ種の頂点の味。このやさしくもあり、それでいて酒としての飲み応えを充分に感じさせる味わいは、みんなをハッピーにさせてくれる。ワインを愛好家から、ワインをはじめて口にする人まで、みんなが「おいしい」とふと口にするワインである。
 ちなみに1999年は過去10年で最高の出来である。


<ボージョレー>
 最近のボージョレーはコンビニでいつでも買える気軽なワインとして親しまれている。しかし、一歩間違えれば入門編ワインとして、ワインを少し知った人に軽く見られやすいのも事実である。毎年11月の第三木曜日には世界中の店頭でボージョレーヌーボーを買い求める行列が出来、誰もが一番を競っている。
 少しワインを知る頃になると、そのお祭り騒ぎにも冷静な目を持つようになり、取り立てて騒いでいない自分に気づいたりする。空輸で運ばれるヌーボーは決して安くない。華やかなビンに惑わされ、ワインを味わうより、ワインをこの日に飲んだ事実だけを欲しているようにも思えてならない。
 白のシャブリと並んでボージョレーの赤は万人が知るメジャーワインの代表格であり、そのブランド化した名前は、商売をする上でメリットも多い。そのため、採算重視の粗悪なワインも多い。名前に惹かれて買ってはみたものの、本当においしいのかなと首をひねっている家庭も多いことだろう。しかしである。マーセル・ラピエールのボージョレーワインを飲めば、感動を新たにできる。この地区にも極上の一杯はあるのである。


<マーセル・ラピエール>
 最近は都内でも神奈川県内でもこのマーセル・ラピエールのボージョレーを見かけるようになったが、このワインほどかわいそうな売られ方をしているワインも他にない。このワインを堪能するには保存状態が完璧でなければならず、一日でも保存を怠れば本来の味は失われてしまう。その理由は完全天然ワインだからである。完全天然ワインだからこそ、あの味わいを堪能できるのだ。
 ラピエールのワインは摂氏14度以下で保存するようビンに注意書きがある。摂氏18度以上の場所にあると、発酵が始まる。シャンパーニュのような瓶内二次発酵ではなく、単なる劣化である。私の知る専門店では、購入後の輸送方法を確認し、輸送に難があれば販売しないという徹底振りである。
 なぜか。それはもちろん、全てはおいしく戴くために、である。


<ワインの特徴>
  1. 有機農法による栽培で、もちろん除草剤も使わない。
    虫も雑草も寄り付かない葡萄は逆に不健康だ。野菜は虫食いがある方がうまい。
     
  2. 手作業による収穫と低く抑えられた収穫量。
    手で摘むと、葡萄の選別も出来るし、収穫時に傷つけずに済む。ただ人手も時間も掛り大変な作業だ。高値で商売できるコートドールの特級ならいざ知らず、 3,000円が精一杯のボージョレー地区では商売厳しそうだ。
     
  3. 葡萄の皮に扶植した天然酵母のみによる発酵。
    自然のたまもの
     
  4. 補糖、補酸はしない。
    糖分が足りなければアルコール度数が足らず、AOC法の基準がクリアできない。補糖は法律でも認められているが、葡萄以外の糖を足してしまえば完全天然でなくなる。また、酸がなければただの赤い水。
     
  5. 酸化防止剤の未使用。
    酸化してしまえば、もうワインじゃない。ワインは酸化との戦いだ。栓を抜いたワインが1ヶ月後もうまかったという話はスティルワインでは聞かない。
     
  6. ろ過しない。
    ろ過すると雑菌を排除できるが、同時にワインにとっての重要な要素も除いてしまう。ろ過しなければ、うまみはそのまま。
     
  7. ワックスシーリングによる完全密閉。
    ワックスシーリングは完全に外気を遮断できる。膨張による液漏れも避けることができる。長熟タイプのワインにはよくある小技である。おいしいワインの目安にもなる。一工程増える面倒くささを、押しのけるワイン造りのこだわりが垣間見られる。
     
 つまり葡萄が自然のままに発酵し、自然のままにワインとなる。その過程の最低限の手伝いを人間がしているのだ。自然のまんま。途中で雑菌が入れば台無しになるし、瓶詰め後も劣化を抑える成分が含まれていないため、保存状態が悪ければ、ワインの性質も変ってしまう。取り扱い方法が味わいに決定的な差をつけてしまうのだ。このワインを楽しむには、準備も心がけも必要だ。しかしその手間隙は、飲めば納得するに余りある。


<お奨めワイン>
 マーセル・ラピエールがプロデュースするシャトー・カンボンもうまい。畑はモルゴン周辺にありが、そのACを名乗れないためランクはボージョレー・ヴィラージュとボージョレーである。モルゴンより気持ち安いのもうれしい。

以上


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