A.-F. グロ
試飲日 2001年10月27日
場 所    自宅
照 明 蛍光灯と白熱灯
種 類 フランス AOC赤ワイン                   .
生産者 Domaine A.-F. GROS  (Pommard)    
Vintage 1999
テーマ 記念日にはリシュブール
ワイン Richebourg

<リシュブール>

 深みのあるルビー色。いい。この色合いはすこぶるよい。とくに白熱灯にかざしたときの透き通ったルビー色は完璧である。自宅だからこそ出来る無作法ではあるが、そのために極上の色を見つけることができた。紫のない澄んだ赤系の色合いである。さすがクラシックタイプの造り手であり、色だけでもグランクリュの実力を思い知る。
 アロマはやや閉じ気味であるが、薬草系の怪しげな雰囲気があり、お花畑をうっすらと感じる。下司な言い方が許されるなら、赤い寒天寄せの香りがしないでもないが、薬っぽいところも至ってリシュブールではある。INAOグラスで飲むと、きついアルコールを感じざるを得ず、1999年ビンテージを2001年の今飲むことに罪悪感すら覚える。しかしロブマイヤーグラスでいただくとしっかり丸みを帯びている。確かに閉じ気味ではあるが、しっかりとした濃縮感とビターチョコレート系の味わいはさすがである。飲みこんだ後にやってくるうまみ成分の塊は、何時までもつづき、幸せの瞬間が少し止まっているかのようである。鼻に抜く感じは甘栗系の甘味があり、時間と共になめし皮系も現われてくる。
 
 ヴォーヌ・ロマネの特級ワインに共通しているのは「妖しげ」である。飲む毎に味わいを変え、言い得ぬ感動に包まれる。鳥肌が立つのもこのACの特徴である。残念ながら、今宵は鳥肌までは立たなかったが、口に含む時間が長ければ長いほど、満たされていく何かがある。今飲んでも十分うまい。もちろんこのワインが熟成すれば、トコトンうまいに違いない。あと十年待つ余裕があれば、そうしたいが、今飲めた悦びも十年後に勝るとも劣らないのだろう。感謝である。

抜栓して3時間経ったロブマイヤーグラスのリシュブールはえもいわれぬ味わいになっている。歯茎をやさしく刺激するタンニンと口中に広がるうまみ成分。甘い香り。いい。すばらしくいい。今宵、このある意味特別な夜にこんな素敵なワインを楽しめたことにつくづく感激する次第である。うまーい。熟成のための時間が待てない分、飲み方とグラスで対応すればいい。そのために、すべてはおいしくあるためにワインをテイスティングしているという説もある。

<A.−F.グロ>
 ドメーヌ・シャングロのあとを告ぐヴォーヌ・ロマネの名門である。ポマールのパラン家にと嫁いだ為にドメーヌの本拠地はポマールにある。グロ家は似たような名前が沢山あり、混乱しがちだが、彼らの家計図もワイン談義の必須アイテムとしてよく語られていたりする。A.-Fはアンヌ・フランソワーズのことであるが、ドメーヌ・アンヌ・グロとは親戚ながら違うドメーヌである。アンヌ・グロの先代がドメーヌ・アンヌ・フランソワ・グロであり、さらに似ているが違うことに注意しよう。エチケットが違うので手にすれば一目瞭然ではあるが・・・。

 A.-F.グロもアンヌ・グロも女性が当主である。活躍する女性の代名詞的な存在と思っているのは私だけだろうか。今回のリシュブールも家族の祝い事の為に飲むことにしたワインで、その女性への思いをワインに込めたつもりではある。そういえば、妹の嫁入り前にはアンヌ・グロのクロヴージョ1997で乾杯した。宴の主役とワインの物語がダブって見えるとき、ワインのすばらしさが今宵の演出を高めてくれると信じていたりする。脇役に徹するときのグランクリュはとても素敵である。そんな夜は滅多にないので、とっておきの夜には少しばかり贅沢したいものである。

 ところでミッシェル・グロは1999年からエチケットを変えたのだろうか。銀座某所に大量に置かれていたが、あれはまさしくクロデレアであったのだが。少しがっかりしたりした。


以上
 


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