アミオ・ギュィ
試飲日 2001年11月10日
場 所    都内某所     
照 明 白熱灯
種 類 フランス AOC白ワイン
生産者 Domaine Amiot Guy et Fils (Chassagne-Montrachet)
Vintage 1992
テーマ グレートビンテージの白はうまい
ワイン Puligny-Montrachet 1er Cru Les Demoiselles

<ピュリニー・モンラシェ レ・ドモワゼル1級>
 この凄い色はなんだ。深く重い黄金色が、白熱灯のスポットライトを受けて輝いている。この質量のある黄金は、すでに私を魅了している。果肉が熟れたときの、あの独特の深い色合いが、このゴールドに重なっている。グラスの中心部に行くほど深みを増す黄金色である。1992年というブルゴーニュ白ワインにとって、まさに偉大な年のすばらしい畑。これはいい。香りもまた極うまである。こんがり焼きあがったばかりのトーストに、蜂の巣から掬ったばかりの蜂蜜をたっぷりつけて頬ばった時に鼻から抜ける香りにそっくりである。熟成し白の完成されたブーケがここにある。樽香にハニー香が重なり、至福である。自ずと目尻も垂れてくる。口に含めば香りと同じ味がしている。とろみ感と酸もしっかり存在し、うまみ成分が口の周りを漂いつづけている。やや冷やし目のため苦味も感じるが、温度の上昇と共にもわんもわん系になることだろう。白いテーブルクロスに意図的に落とす黄金の雫が、透明感を伴いつつ、ゆらゆら揺れている。それはあたかも妖精のようでもある。
 
 今回は初台某所にて某有名T氏から直送された蝦夷鹿のカルパッチョに合わせてみた。これがまた合うから不思議である。鹿の臭みを消すためか、オリーブオイル系の重めに仕上げられた鹿肉と、食感が楽しいナッツの甘味に良く合うのだ。厨房で自慢の腕を振るう坊主っくりのご主人と目が合い、思わず微笑んでしまう。ちょっと照れ笑いである。

 時間の経過にもめげず、ドモワゼルはハニー香は消える事を知らない。ただお叱りを覚悟で言えば、もう少し味わいに深みが欲しい気もしないでもない。熟成した白が持つ幾層にも重なるミルフィーユ系の趣よりは、うまみ成分の単結晶的な純粋さを感じる。1992というグレートビンテージが勝手に巨大な「妄想雲」を成長させ、ミルフィーユでないことに、やや意表をつかれただけかもしれない。普段のグラスよりも大いからかもしれないし、この領域はすでに好みの問題でもありそうである。 飲み手の技量不足という説もある。

 日本市場に出回ることも少ない1992の白は決して外さない。値段も安くはないが、この価値観の共有は貴重である。価格の正当性を感じ、同席した人たちとは当然ながら、厨房やフロアで働く人々ともこの味を共有したくなっていた。まだ少しボトルにはワインは残っていたが、すべてを注いでもらうわけにはいかない。他のお客さんの視界の外で、全員に味わってもらいたい。変な客かもしれないが、なんだかこの世界は、この世界を知るひとと共有したい味なのである。そういう境地に達するピュリニーモンラシェである。感謝。


以上
 


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