キュファン・エイナン
試飲日 2001年11月18日
場 所    神奈川県内某所
照 明 蛍光灯
種 類 フランス AOC白ワイン
生産者 Domaine Guffens-Heynen  (Vergisson)    
Vintage 1998
テーマ これはマコネのモンラシェか
ワイン Pouilly-Fuissé Premier Jus

<ピュイイ・フュイッセ プルミエ・ジュ>

 抜栓後すぐINAOグラスへ。素敵な食卓を飾るにふさわしい黄金に輝く、深みのある濃い色合い。燻した麦わら香に豊かなハニー香がINAOグラスから溢れんばかりに立ちこめている。バニラもある。うおっ。すごい。こんなパワフルなピュイイ・フュイッセはもちろん初めてである。十分なとろみを携え、重く、しっかりした味わい。力強い。酸味と苦味(室温のベストな温度のため、冷やし過ぎからの苦味ではなく、このワインが本来持ちうるビターなそれである)が、絶妙なバランスで調和している。深い味わいは、極上のムルソーを彷彿とさせ、普通のプュイイ・フュイッセの倍以上の価格帯にして、極上のムルソーの半分以下の価格はびっくりの一言である。
 うまい、というよりすごい。これぞジャン・マリー・ギュファンスを世界中に知らしめるワインなのだ。一番絞りを思わせる名前も印象的である。濃くって強くって、うまみの塊である。料理と共に飲めば、すいっと一歩下がる懐の大きさも垣間見せる。いい。

 さて、このワインはマコネ地区のACプュイイ・フュイッセである。マコネ地区を代表するACにして、名前のかわいらしさから知名度の高いワインである。知名度の高さとそれに伴う価格の高さと、気合を入れなくても高値で売れるために味わいの残念さが錯綜いがちなアペラシオンではあるが、極上のワインはこのアペラシオンのすばらしさを知らしめてくれる。特にこのギュファン・エイナンはすばらしい。ヴェルジェとしてブルゴーニュの白ワインを席巻する当主ギュファンスの実力が、ずしりと心に突き刺さる。

 ところでこのワインはアペラシオンの壁を超え、マコンのモンラシェと噂される。なるほどその実力は頷くところもあるが、やはりマコンのACは超えていないと思われる。余韻・上品さ・優雅さ・骨身に沁みる何かが、ないためである。確かに極上の一杯ではある。しかし、である。ファーストインプレッションは驚異的だが、時間と共に楽しむほどには余韻が弱い。それは至極当たり前である。ピュイイ・フュイッセだからである。

 このワインはコート・ドールの特級ワインと比べるのではなく、やはりアペラシオンを意識して、その飛び越える勢いを楽しむほうが、より楽しめると思われる。このワインがマコネ地区のワインであり、それ以外でも、それ以上でも、それ以下でもないのだから。産地を楽しむことが、目の前のワインを楽しむことに通じると思う。すべてはおいしくあるために。特級ワインでは演出し得ない悦びを、このワインに覚える。今宵、素敵な食卓と、このワインとの出会いと、そして何よりこの時を共有した友に感謝である。

 このプルミエ・ジュは少し前の都内デパートで良く見かけた。今はもう見かけないが、そのとき買われた方は、極上の一杯を手にしたことになるのだろう。


以上
 


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