ルイ・ジャド | |||||||||||||||||||||||
試飲日 2001年12月14日 | |||||||||||||||||||||||
<味わい> 抜栓後すぐINAOへ。輝く黒系の深いルビー色。ヴォーヌ・ロマネにしてはやや濃いめである。エッジにムラサキはない。若々しさから一歩熟成の段階に入ったとの印象を受ける優雅さを、白熱灯の光を受けながら美しく輝いている。 香りにすごいパワーを感じる。立ちこめる極上のアロマは嗅覚を司る器官を直撃し、一瞬後づさりするほどである。花の香り、香水、煙、ビターチョコ、なめし皮、熟した黒系果実香などがすごい勢いで立ち上り、それぞれの香りが強調されると他の香りが静かに下がるという感じである。各々の香りがそれぞれのタイミングを見計らい、その香りが舞台中央に上がると、他の香りはスポットライトから外れる。素晴らしいと言わずになんといえば良いのか、言葉を失う。 味わいも優雅に濃縮されていて、一口含めば全身が鳥肌で覆われ、骨の髄に緊張を走らせる。う。である。深い奥行きと豊かな果実味。うまみ成分が口周辺に漂いつづけ、飲むたびに、そのうまみ成分が体を押し上げる。史上最高のエシェゾーである。 ロブマイヤーの通称ヴォーヌ・ロマネ用グラスに注ぐと、すべての要素が強調され、濃縮され、まさにこのワインを飲むために設計されたとしか思えない極上の味を提供してくれる。そのグラスとは、「千と千尋の神隠し」で千尋の父が豚になる直前にむさぼり食べていたジューシーな食べ物に似た形である。INAOグラスをふたまわり大きくし、口元を繊細に広げた形である。ロブマイヤーは途中でへたる事などなく、ずいずいその味わいを背筋に届ける。本来ならばデカンタや飲み方に一工夫必要なワインであるが、グラスの助けを得て、静かに注ぐだけで、快楽の世界へと誘ってくれる。恐れ入りました。 今回のエシェゾーは間違いなく、エシェゾー史上最高の味わいである。ブルゴーニュに求めるすべての要素が確実に構成されているからだ。2年ほど前にDRCの1991エシェゾーも泣きながら飲んだ覚えが鮮明だが、明らかにそれを上回っている。DRCの半値近い価格も驚きながら、やはり通常のエシェゾーよりは高い理由が、飲めばなるほどである。また、今回のワインはドメーヌもののルイ・ジャドである。ネゴシアンものは日本国内でも見かけるが、エチケットの下にはっきりとDomaine Louis Jadotと謳われている。ルイ・ジャドの恐るべき実力を肌で感じる次第である。 <感謝> 今回のスペシャル・ドリンキングは某所の某氏宅で、ミクルスキーのACブルゴーニュの試飲の直後に行われた。ジャズの名曲が室内に流れる最高のシチュエーションであった。特に「パリの空の下で」をいくつかのミュージシャンとバージョンの違いを楽しみながらのルイ・ジャドは、非日常の極上のひとときであった。某氏にこの場を借りて感謝申し上げる次第である。ジャズとエシェゾー。最高である。 以上 |