ルイ・ラトゥール
試飲日 2000年10月15日
場 所    神奈川県内某所       
照 明 蛍光灯
種 類 フランス ブルゴーニュ産AOCワイン
生産者 Domaine LOUIS LATOUR (Beaune)
Vintage 1993
テーマ ルイ・ラトゥールのコルトン。
ワイン Corton Domaine Latour


<味の印象>
 色はうすい。こげ茶色を茶色で薄めたような色合い。熟成の色合いとも少し違うが、それに相通ずる品のよさを伴っている。ほこりっぽく生暖かいアロマは、このワインを印象付ける。やさしく包み込まれる感じだ。この感覚はたまらなく良い。栗を思わせる生暖かい香に誘われてワインを口に運ぶと、意外に冷たさを感じる。テイスティング温度であり、室温に比べても大差はないはずなのに、この冷たい感触には少し驚いた。やはり香の温かみとのギャップなのだろう。うまい。味も極めて上品にまとまっている。とてもバランスがいいワイン。香・色・味のどれもがでしゃばることはせず、かといって見劣りするところもない。非常に平均点の高いワインである。強烈に訴えてはこないが、しみじみおいしいと実感できる。大変おいしゅうございます。
 ちなみにコルトンはコート・ド・ボーヌ唯一の赤の特級ワインであり、通常コート・ド・ニュイ地区の特級と比べられる。ボーヌのワインでありながら、ボーヌの評価には入らないワインである。

 コルトンの特徴は、ほこりっぽくて鉱物的であり、同時に端正な力強さを持ち合わせているが、若いうちは取っ付き難いという。たしかに今まで体験したコルトンはどこか、好みと違う印象をもちつづけていた。この南の特級を味わうには力量が足りないことを痛感していたのも事実である。しかし、今回のコルトンはうまい。ようやくコルトンのうまさを分かり合えたような気がして、とてもうれしい限りである。


<コルトン>
 コルトンは名前の覚えやすさに反し、畑の名乗り方が特殊で、とても全部を覚えきれるシロモノではない。白のコルトン・シャルルマーニュの名声に比べ、赤のコルトンはいまひとつ目メジャーになりきれていないが、コート・ド・ボーヌの唯一の赤ワイン特級畑として、その特徴を知ることは無益なことではない。

 コルトンはコルトンの丘全体にアペラシオンが広がっており、ブルゴーニュの中でも広大である。畑は3つの村(アロース・コルトンとペルナン・ペルジュレスそしてラドワ・セリニ)にまたがっているが、通常コルトンのAOCはアロース・コルトンでよいとされている。コルトンの丘の斜面にはシャルドネを植えれば、コルトン・シャルルマーニュを名乗れ、ピノ・ノワールを植えればコルトンを名乗れる場所もある。また、白でもコルトンとだけ名乗る特級もある。なんとも不可解である。
 しかもコルトンは28面の畑に細分化され、そけぞれはコルトンと‐(ハイフン)でつなげその個別の畑名を名乗ることもできる。例えばコルトン-ルナルドやコルトン-ブレサンドなどは評価が高い。また、ドメーヌ・ジョセフ・フェブレーはAOC法施行以前に許可された自分の商標名を今も畑名とすることを許されている。コルトン・クロ・デ・コルトン・フェブレーである。このワインの評価も高く、赤のトップワインに挙げる人も多い。
 いずれにしてもコルトンは不可解であるが、由緒正しいこの特級を飲むことはとても有意義であり、コート・ド・ニュイの特級との違いを見つけるのも愉しいひと時である。


<ルイ・ラトゥール>
 ルイ・ラトゥールはブルゴーニュを代表するネゴシアンであり、ドメーヌである。とくにその名声はコルトン・シャルルマーニュとシュバリエ・モンラッシェに代表され、白ワインの卓越した造り手である。名門である。今回はコルトンにしぼって紹介してみよう。
 特に特級コルトン(コルトン・シャルルマーニュを含む)はEを除いてドメーヌものであり、ルイ・ラトゥールの評価に直結している。下記のワインは、同じコルトンの丘の斜面から造られるが、そのコンセプトを微妙に変えている。消費者としてその違いを楽しむのも、ちょっとおしゃれである。

A. Corton-Charlemagne
コルトン・シャルルマーニュ
 ルイ・ラトゥールの看板ワインであり、世界の白ワインの最高峰に君臨している。宮中晩餐会の定番ワインとして有名である。コルトン・シャルルマーニュの基準になることでも知られ、時としてトップ評価を得る。量も多いので、見かけることも多い。特に1997年は極上の味わいを醸し出している。

B. Chateau Corton Grancey
シャトー・コルトン・グランセ
 ルイ・ラトゥール社の赤の看板ワインである。17haも所有するコルトンの畑のなかで、古木だけから造られるワイン。コルトンのブレンドであり、テロワールを重視するブルゴーニュにあっては異色の存在。ただあくまでもコルトン内のブレンドなので、その解釈に賛否両論ありそうだ。試飲経験は過去に一回あるだけ。昨年末に飲んだ1995年産は残念だった。これほど外したワインも他にない。

C. Corton Domaine Latour
コルトン・ドメーヌ・ラトゥール
 今回のワインがこれ。自社名を掲げてはいるが、法律上はコルトンだろう。シャトー・コルトン・グランセとはブレンドを違えているらしい。コルトン全体をブレンドして造られる。今回の例を見るまでもなく、おいしいワインである。特級としては格安で1万円でお釣りが来るのもうれしい。コストパフォーマンスに長け、素敵な夜を約束してくれる。

D. Corton Clos de la Vigne au Saint
 コルトン・クロ・ド・ラ・ヴィーニュ・オー・サン
 単独名のワイン。畑を限定したことで、畑の特徴を楽しむことができる。時としてコルトンで最も評価が高い。特にルイ・ラトゥールは25haの畑をほぼ単独所有している(ほぼということは他にも所有者はいるが、誰もそんな事は気にしていない)。1995年産は飲み応えもあり、うまみ成分が静かに身体にしみわたる。地味ではあるが、うまいワインである。

E. Corton Clos du Roi
コルトン・クロ・デュ・ロワ
 このワインだけネゴシアンものであり、いまだ口にしたことがないワインではある。畑はコルトンを代表している。

 ルイ・ラトゥール社においてネゴシアンものとドメーヌ(自社畑)ものの違いはわかりやすい。ボトルの肩口にある丸いエチケットにメゾンとあればネゴシアン、ドメーヌとあればもちろんドメーヌものである。また、ルイ・ラトゥールはネゴシアン=ドメーヌとして赤のルイ・ジャドとともにブルゴーニュには欠かせない存在であることも記しておこう。

以上


目次へ    HOME

Copyright (C) 2000 Yuji Nishikata All Rights Reserved.