アルマン・ルソー | ||||||||||||||||||||||
試飲日 2000年10月15日など | ||||||||||||||||||||||
<味の印象> この強烈な香は何物にも買えがたい。鼻腔に一直線に飛び込んでくる勢いにしばし圧倒された。なにかこう、目に沁みいるような香だ。しばらく筋肉が硬直し、ようやく解き放たれてもなお、その魔力の虜になっている自分に気がついた。味も文句のつけようがない。うまさが向こうからやってくる。飲み手がすべき事ことは何もない。何も考えずただ口に運べばよい。たったそれだけのことで、無上の悦びに満たされる。色合いも薄い黒系の茶色。全体として、とても上品であり、それでいてなんだかとても怪しげな雰囲気に包まれる。特級畑のなせる技であろう。さすがジュブレ・シャンベルタン村の王者である。隣接するモレ・サン・ドニ村の特級クロ・ド・ラ・ロシュでもその実力をいかんなく発揮してくれている。 ところが、である。時間が経過するごとに強烈なインパクトは影をひそめだした。余韻が弱い。はじめのインパクトの強烈だったからだろうか。その反動からか、勢いは確実に衰え始めた。残念である。味に厚みがなくなり、アロマは沈んでいった。やはりルソーの時代は終わってしまったのだろうか。ルソーの全盛期は1993年までとの説が真実味を帯びてくる。1988年のシャンベルタンで見せつけた、圧倒的なあの力強さはこのクロ・ド・ラ・ロシュには見受けられない。あのシャンベルタンを一瞬、彷彿させただけで終わってしまったことはいかにも残念である。しかし、世界一のシャンベルタンと比べてしょうがない。この不思議な魅力を持つワインに集中すべきだ。ワインの味を決めるのは、飲み手の実力次第ともいわれる。このワインをいかにおいしく頂くことができるか、力量が試されてもいる。そこに神経を集中させて、この偉大なブルゴーニュを味わおう。 このクロ・ド・ラ・ロシュもまた確実にうまいワインではある。ただ、王者アルマン・ルソーの絶頂期のシャンベルタンを知っていることに後ろめたさも感じてしまう。ワインと対峙する前に、消費者として過去の思い出と、溢れる情報が邪魔をしていた。ワインを見つめる目に過信や妄想がはびこっていた。自分の至らなさに反省することしきりである。 <アルマン・ルソー> 当主シャルル・ルソーは1959年に父の事故死によってドメーヌを引き継いで以来、すでに40年もの長期にわたってワインを造りつづけている。特に1980年代後半から1990年代前半にかけての名声は他者を圧倒する勢いだ。その実力はジュブレ・シャンベルタンの王者の称号を与えられるほどである。 最近のシャルル・ルソーは写真で拝見する限りはいいお爺さんである。時代と共にルソー自身の好みの味が変遷しているのか、造りたくても造れなくなっているのかは想像の域を越えないが、確実にその味わいは異なっている。あとは好みで選べばよい。豪勢に絶頂期の世界一のシャンベルタンを飲むも良し、絶頂期を過ぎてもなおうまいワインを選ぶも良しだ。両者には確実な差があれども、世界トップレベルには違いがないのだから。 もし、そんなことは今の自分には到底あり得ないのだが、もしも絶頂期のルソーを人から贈られたら、それは最高級のもてなしの証しである。その贈り手の意図するところを汲んでやるのが、貰い手の立場である。そして、こちらのケースも貧乏ゆえ皆無に近いが、もしお世話になった方に極上のルソーを贈ることが出来たら、自分なりの最高の感謝のシルシとして、その辺のところをぜひ汲んでやっていただきたいと思う次第だ。 <ルソーのワイン> ジュブレ・シャンベルタンを代表する造り手として、主なワインを列挙しておこう。ちなみに今回のクロ・ド・ラ・ロシュはルソー唯一のモレサンドニ村のワインである。 Chambertin Chambertin-Clos de Be`se Charmes-Chambertin Mazis-Chambertin Ruchottes-Chambertin Clos des Ruchottes (Monopole) Gevrey-Chambertin 1er Cru Clos Saints Jacques Gevrey-Chambertin 1er Cru Les Cazetiers Gevrey-Chambertin 1er Cru Lavaut Saints Jacques 極上の畑ばかりだ。読んでいるだけで唾が出てくるから不思議だ。 以上 |