＜味わい＞
　抜栓後すぐロブマイヤー・バレリーナグラスへ。ギンギンに冷えたボランジェは、薄いグラスを若干くもらせている。薄く輝く黄金色は、木目の細かい幾筋もの泡を優雅に立ち上らせ、いかにもエレガントである。柑橘系の果実香、トースト香に焦げた感じのバニラ香が加わっている。チョコレートのような風味も感じ、複雑で貴賓に満ちた香りである。口に含めば、しっかりとした重量感。喉に若干の抵抗感を伴いつつ通過していく様は、ピノ・ノワールの質感からくるものだろう。うーん。うまい。さすがボランジェの代表作である。重めの質感にもかかわらず、後味は爽快で、優雅な余韻にしばらくの時間を過ごしたりする。背筋にきりりとした緊張を走らせつつ、気分はすっかりジェームズ・ボンドである。

　今回は諸般の都合によりグラス一杯だったが、次回は一本丸々堪能したいものである。素敵な夜にボランジェもいいし、たった一人で飲み干す罪悪感も悪くない。偉大なシャンパーニュは、お酒というカテゴリーを超えて、なんだか妙に小悪魔的である。シャルドネ100%のブラン・ド・ブランも爽快だが、ピノ・ノワールの比率が高いボランジェもまた、その伝統を感じつつ、とても至福なひとときである。

　ピノ・ノワール65%・シャルドネ35%からなる1985R.D.は2000年6月28日にデゴルジュマン(澱引き)されて出荷された。


以上