ジャン・リケール | ||||||||||||||||||||||
試飲日 2000年10月22日 | ||||||||||||||||||||||
<味の印象> 色は緑がかった透明感のある黄色。味はさっぱりとしていてキレがいい。とれたてのリンゴのように後味もすっきりしている。秋風が頬をかすめる頃に、ふと手軽な白ワインが飲みたくなったら、まさにこのジャン・リケールのヴィレ・クレッセの古木から造られたワインだ。肩肘張らず、うんちくたれず素直においしいワインである。 おいしい白が飲みたくなったら、ぜひこのワインをお奨めしたい。シャブリという気分ではなく、コートドボーヌの銘醸ほど気合を入れたくない日に最高である。このブルゴーニュのマコネ地区で造られる軽快なワインは、日常生活の疲れをほっと癒してくれる。まさにこういうワインがいつもそばに欲しい。 <ジャン・リケール> Jean RIJCKAERT。このスペルはまず読めない。ジャン・リケールと読む。どこの出身かは不明だが、師匠との関係を想像するとベルギーかもしれない。日本ではまだ無名だが、その分ワインは割安でとてもお買い得である。誰もがこの実力を知る頃には値段も跳ね上がりそうだから、今のうちに十分な楽しんでおこう。 なぜ、この無名の造り手が優秀なのか。それは彼の経歴に裏づけされる。彼はマコネ地区の第一人者Domaine Guffens-Heynen(ギュファン・エイナン)の下で修行を積んだのである。マコネ地区きっての造り手の一番弟子が暖簾分けして作ったドメーヌである。暖簾分けといえば日本では家系ラーメンが幅を利かせているが、ランクが違う話ではある。 ギュファン・エイナンは白ワインに特化したネゴシアンVERGET(ヴェルジェ)を運営していることでも有名だ。彼のワインはヴェルジェを含め評価は高い。特にヴェルジェの評判は高く、シャブリでは破格値の2万円台で取引されることもあるし、極上のシャサーニュ・モンラッシェはセラーに置きたいワインのひとつである。世界的に評価を得ているドメーヌで技術を学んだ者が造るワインである。コルクを抜く前によだれも垂れようというものだ。ジャン・リケール ぜひとも覚えておきたい造り手である。 また、リケールはオート・コート・ド・ニュイやジュラのアルボワでも品がよく飲みやすい白ワインを造っている。マコン・クレッセとは違う趣があり、比べてみるのも愉しいひと時だ。彼のワインはそんなに高くないので、気軽に楽しめるのが何よりうれしい。 <マコネ地区> ブルゴーニュ地方のボージョレーの北側に位置し、一部はボージョレーのアペラシオンと重複している。この地区には特級畑も一級畑もない。それどころか村名すらない。プィイ・フュイセやサンベ・ラン、マコン-ヴィラージュなど、いくつかの村が合同でアペラシオンを構成している。ワインは畑の素性が明確であるほど、極上である。その点このマコネ地区は畑の所在が大雑把である。そのためにワインのランクは格下であるが、シャルドネという貴賓種から造られるワインは充分に私を堪能させてくれる。りんごやレモンなどの新鮮な果実実が売りで、よく冷やしてがぶ飲みできるタイプである。出来立てがおいしい。同じブルゴーニュでもコート・ドールから少し南に下っただけで、シャルドネの味わいが違うのもワインの魅力のひとつだ。 葡萄品種は白はシャルドネ、赤はガメイと一部ピノノワールが栽培されている。珍しいボージョレーの白もこの地区から生産されている。 またこの地区は協同組合の勢力が幅を利かせていて、今回のマコン・クレッセもクレッセ協同組合の名前がワイン名になっている。 マコネ地区はつべこべ言わずに、ただ飲むのがおいしい。気張って理屈をこねても誰も関心を寄せてくれない。ワインのおいしさはワイン自体が語ってくれるのだから、素直にそれに従ってみよう。 以上 |