ドニ・モルテ | |||||||||||||||||||||||
試飲日 2002年02月01日 | |||||||||||||||||||||||
<1998 ジュブレ・シャンベルタン> 抜栓後INAOへ。冷たさを感じないテイスティング温度。茶系のニュアンスが強い黒系のルビー色。甘いアロマのなかにスミレが一面に広がっている。カンナで削ったばかりの木を意識させるような樹脂のアロマもある。恐らく新樽の影響だろう。香りと共通する甘い味わいは、余韻の旨みとはやや趣を変えて、若干、舌全体に残る感じがある。やや重ったるい感じで、ACジュブレ・シャンベルタンにして、ジャン・ガローデのポマール・ノワゾンを連想させる甘味である。決して嫌な味ではないが、もう少しすっきり感が欲しいところである。 1998は今回で2回目である(レポート未掲載)。前回は初台某所で食事と共にブルゴーニュグラスで頂いていた。果実味ベースのすっきりとした味わいを記憶しているが、今回のワインはそのときの記憶に戸惑いを感じさせたりする。同じワインでも環境によってまったく味が違うのはよくある話なので、ここはひとつ時間を待ってみることにしよう。 抜栓30分ほどで、果砂糖を焦がしたような香りが出てきた。口に含んでも舌の残存感は消え、シルキーな味わいに変化している。果実味もたっぷりあり、ロースト香とあいまってふくよかな上品さに包まれている。ドニー節がようやく感じられ、ほっと一安心である。 このワインを今飲むならば、やはり抜栓して30分から1時間程度待った上でINAOグラスで楽しむか、すぐ飲むならば冷たさを感じるほどに冷やしてブルゴーニュグラスでたっぷりやるのも悪くない。冷やすことで引き締まる味わいが、温度の上昇と共に乱れていく様を想像すると、よだれも出てくるというものである。常温のまま大きなグラスでやると、一気に味が崩れる可能性があり、常温なら小さいグラスでたっぷり時間をかけてみたい。温度やグラスを気にするのは、本格的なジュブレ・シャンベルタンからはやや距離を置いた弱々しさを感じざるを得ないためである。 <1999 ジュブレ・シャンベルタン> 抜栓後すぐINAOへ。1998と同時抜栓、同時サービスである。おお。いきなり色合いからして違う。1998にはないムラサキをエッジに輝かせ黒系の色合いである。別名デュガ色に近い。甘さを感じないスミレのインパクトが強く、鼻を近づけただけでガツンと届く勢いがある。口に含めば、渋みのうまさ。端正な味わいは、この村特有の荒荒しさを豊かに覆い隠し、つくづく上品である。時間と共にアジア系スパイスらしきアロマが出てくる。インドから取り寄せた数種類のカレー粉を混ぜ合わせる前のどれかの香りに似ているような、怪しげなスパイス香である。しっかりとした辛口は、程よく歯茎を刺激して、時間と共に現れる熟した果実と香水系の余韻に身をゆだねたりする。ドニ・モルテの典型ともいえる上品な味わいである。これぞ、いとしのドニーである。 唯一の弱点といえば、その価格帯だろう。1998より2500円も高い。もう少し安くないと財布に厳しすぎたりする。数本購入して毎年味わいたい一本であるのに、大台に迫る価格はなんとも頂けないは、自分の懐の不徳の致すところである。ともかく1999は1998とは格段上の差を見せつけている。1999は飲み方をたいして考えなくても、大いなるジュブレシャンベルタンを堪能できることだろう。この差は意外に大きく、100点満点の評価をするなら、1998と1999には3点弱ほどの差があるように思う。 以上 |