アルベール・モロ
試飲日 2002年03月10日
場 所    神奈川県内某所     
照 明 蛍光灯
種 類 フランス ブルゴーニュ地方赤AOCワイン
生産者 Albert MOROT (Beaune)
Vintage 1989
テーマ 選ばれしもの2
ワイン Beaune 1er cru Les Teurons

<ボーヌ レ・トゥーロン 1989>
 若干冷やして抜栓後すぐINAOグラスへ。美しいガーネットが上品に輝いている。ピノ・ノワールがここまで完璧な色合いに熟成するのかと思わせる趣のある色合いである。熟成したピノ・ノワールにありがちのもろみ香は微かに薫る程度で、黒系果実の思い出を残しつつ、カラメルや燻し気味のなめし皮がたおやかに鼻腔をくすぐってくる。時間と共にミルクチョコレートを連想させる甘いブーケに包まれて、なにやら無茶苦茶うれしくなってくる。口に含めば、「するする」と何の抵抗も無く喉を通過するなめらかさ。しっかりと構造的な要素を残しつつ、シルキーな趣とほのかな甘味は、熟成したピノ・ノワールの最大の魅力である。しっかりとアルコール感も残しているので、1本丸々楽しみたくなる逸品だ。余韻も長く、ほのぼのとした雰囲気を漂わせつつ、偉大なボーヌのワインに畏敬の念を覚える。

 パーカーのブルゴーニュによれば、このワインはボーヌを代表する造り手「アルベール・モロ」のマダム・フランソワーズ・ショパンが言うところの「骨を覆いこむボーヌ」で、コート・ド・ニュイのワインを思わせつつ、2010年まで熟成すると断言している。なるほど、飲めば納得である。当時のパーカーのテイスティングコメントを読むと、かつてぎゅっと濃縮していたであろう黒系果実の骨組が、時間と共にほどけていく様が目に浮かぶ。瓶詰め当時試飲を経験していなくとも、当時のアグレッシブな黒系果実の濃縮感が目に浮かび、その後10余年の歳月を得て、自分が同じワインを体験することで熟成のラインがぽっと体を温める。絶賛している割に当時の評価は89点で、パーカーの得点だけが一人歩きする今日、彼の評価の受け止め方が難しかったりもするが、いずれにしても今回のボーヌはすばらしい逸品には違いないから、難しい憶測はやめにしよう。

 今回のワインは2002年2月にアルベール・モロのセラーから蔵出された貴重な一本で、完璧な熟成が保証されたワインである。ボーヌの一級にして1万円オーバーの価格設定は、高いと思いつつ、飲めば納得せざるを得なかったりするし、逆に安いとさえ錯覚させる威力がある。そしてそんな貴重なワインとなぜ出会えるのか、幸運に感謝である。そしてドメーヌ・セラー蔵出ワインを飲んでしまうと、自宅セラーでの熟成に疑問も持たざるを得ない。ここまでの熟成感を期待するのは、家電製品に対して厳しかろうことは想像の範囲である。やはり、出会った時が飲み頃の信条を変えずに、大いにワインを楽しみたい。


以上
 


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