トゥーシェ | |||||||||||||||||||||||
試飲日 2002年3月15日 | |||||||||||||||||||||||
冷やして抜栓後INAOグラスへ。まっ黄色な色合いに黄緑が微かに入った感がある。干し葡萄を連想する甘いアロマが、楽しかった食事のエンディングを無言のうちに伝えてくれる。微かな蜂蜜と甘いお菓子のような香りも鼻腔をくすぐる。グラスを伝う涙は、トロリ系である。口に含めば、甘口タイプにしては酸味が前面に出ていて、遅れて甘味のエッセンスが充満するような印象を受ける。ミネラルな味わいも持ち合わせていて、甘口白ワインにして意外にスイスイ飲みこめる軽やかさ。とろりとした感触はあまり感じられなかったりする。ごくりと飲み干せば、確かに甘口ワイン仕立てであるが、口に留まっているうちは辛口ワインのニュアンスも持ち合わせている。甘口なのに、意外に甘くない不思議な感覚。 そしてシュナン・ブランの特徴から背後に鄙びた風情も感じられ、ドイツの貴腐ワインとは違った趣が面白かったりする。甘口なのか辛口なのか困惑気味の余韻はしっかり長く、それでもこれは甘口ワインなのだという結論がゆらゆら漂っている。アルコール度数も13.5%もあり、ドイツの甘口のそれより5%程度高いので、このあたりの関係も味わいの差として興味をそられる。 一方、リーデルのアウスレーゼグラスで楽しめば、INAOで感じた妖艶さは無く、シロップのような味わいになってしまった。くどい系の甘さが強調され、酸味とのバランスが崩れてしまった。このワインは小ぶりのグラスではなく、INAO位の大きさで少し冷やし気味に楽しむべきなのだろう。ソーテルヌ系の貴腐ワインをイメージして飲むと、意外なほど瑞々しいので、こういう甘口ワインもありますよと少し自慢できたりする。一口に甘口といっても多様な風味があることを知り、フランスワインの奥深さに感激の一杯である。 2000年6月トゥーシェ家セラー蔵出。 <トゥーシェ> 1787年から続くロワール河流域のアンジュの名門である。葡萄品種はシュナンブランで、収穫は二度に分けて行われ、一部貴腐果も得られるという。ヴァンダンジュ・タルティーブという遅摘みの手法である。トゥーシェ家は100年以上の古酒を大量に貯蔵していることでも知られている。今回の1990年は1928年・1929年以来の最も偉大なビンテージのひとつで、50年以上の熟成に耐える偉大なワインである。50年後の再会を期待したい。 以上 |