ジャイエ・ジル | |||||||||||||||||||||||
試飲日 2002年3月23日 | |||||||||||||||||||||||
<オート・コート・ド・ニュイ 1989>
抜栓後数分待ってINAOグラスへ。エッジに透明感をあらわしつつ、黒系果実がリキュールになりつつある黒さを伴ったルビー色。抜栓直後は閉じていた香りもようやく開いた感がある。うっすらと砂糖漬けのリキュールを偲ばせつつ、遠慮深く静かに薫ってくる。土壌香、コーヒーも漂うが、力強さはない。口に含めば、なめらかさをいくぶん通り越した感触で、ゆっくりとゆっくりと水に戻ろうとしている途中の印象を受ける。酸味も渋みもあることは確認できるが、その使命は随分前に終えているのだろう。明らかに飲み頃は過ぎているが、決して痛んでいるわけではなく、何の抵抗も感じない飲み応えに、時間の流れを感じざるをえない。誰からも気付かれることもなく静かにその一生を終えようとしていたワインの風情がある。 このワインはワイン単独では弱々しさが前面に出るが、料理と共に味わえば、食中酒としての本領を発揮してくれる。某女史お手製の中華味噌を使ったきのこ料理との相性は抜群で、このジャイエ・ジルがあれば、すばらしい食空間を堪能できる。ワインとしてのそれぞれの役割を認知していれば、がっかりすることなく、逆にワインの楽しさをもたらしてくれる。熟成の階段を降りつづけるワインとの出会いもまたいい楽しからずやである。 以上 |