クロード・デュガ
試飲日 2002年4月26日
場 所    神奈川県内某所


追加試飲
照 明 蛍光灯
種 類 フランス AOC赤ワイン
生産者 Domaine CLAUDE DUGAT
(Gevrey-Chambertin)
Vintage 2000
テーマ デュガの新展開
ワイン Bourgogne
Gevrey-Chambertin
Gevrey-Chambertin 1er cru
 
<ブルゴーニュ>
 抜栓後カラフェに移しトーションでふたをして30分後にINAOグラスへ。液温21℃。従来のデュガ色とも言うべきムラサキ色がほとんど見受けられない色合い。ピノ・ノワールにして限界とも思える深みのある黒に近いルビー色。花の香りが鼻空をくすぐり、ブルーベリーの温かみのある香りが静かに漂っている。このなんともいえない気品溢れるアロマが次第にホットミルクに変わるとき、背中がゾクゾク唸り始めた。微妙な繊細さの上に成り立つ何物にも変えがたい香り。ACブルゴーニュとは思えない高価格の理由がわかる気がする。

 口に含めば、果実味があふれんばかりの豊かさ。タンニンはしっかりあるものの、その大いなる果実味の影に隠れワインの奥深さに一役買っている。デュガ特有の甘い果実はほとんどなく、果実本来の甘さが上品に口の中に広がっていく感じである。酸味のバランスもよく、長い余韻と共にデュガの虜になっている自分に気がついたりする。うまい。


<ジュブレ・シャンベルタン バレルセレクション>
 抜栓後カラフェに勢い良く移し蓋をして15分後にINAOグラスへ。ACブルゴーニュをさらに色濃くしたような、これまたムラサキをエッジに配しない色合い。ブルベリーとミルクが絶妙に混ざり合いチョコレートを添えられたような複雑なアロマが漂っている。口に含めば、スケールが大きく、より濃縮感がある。ジュブレ・シャンベルタンの強さをいかんなく発揮しつつ、それでいてミルキーなしなやかさも持ち合わせる。タンニンが豊かな果実味を邪魔しないように裏方に徹するバランスは見事だ。飲みこんでもなお、終わらない余韻が心地よい。別格である。ただ弱点を挙げるとすれば、香りの浮き沈みが激しいことだろう。ミルクとブルーベリーが弾けたと思うと静かになる。閉じてしまったかと思うと再び開き始める。自分の好みの香りになるまで待つ必要もありそうだ。

 今回のジュブレはバレルセレクションとの情報がある。モーリス・デュガから引き継いだ畑だけから造られていて、97年以降買い増された畑の葡萄は入っていないという。通常は全ての樽をブレンドするはずだが、いろいろあって一樽分スペシャルに出荷したそうで、今回のワインはそれにあたる。なぜそれを口に出来るのか不思議だが、今宵の出会いに感激である。


<ジュブレ・シャンベルタン 1級>
 抜栓後すぐINAOグラスへ。液温20.5℃。全体の基調は村名と同じながら、さらに濃縮された味わい。パワーアップというべき見事な完成度である。ACブルゴーニュが時間と共に酸味が増し、村名ジュブレが時間と共に渋みを増すのと違い、この一級は時間が経っても全くへたることなくいつまでもその実力を維持している。さすが特級グリオット・シャンベルタンの若木が40%入っているだけのことはある。すばらしい。すっかり新生デュガワールドの魅力にはまってしまった。ただこの一級のコストパフォーマンスは悪く、村名ジュブレの倍以上の価格である。1.5倍なら理解の範囲だが、2倍となると村名を二本買ったほうがお徳感があるだろう。


<まとめ>
 99年までのデュガは正直好みではなかったが、2000年はなんともうまいワインである。くどい甘さがなく力強く、それでいて品の良いジュブレ・シャンベルタンになっている。世界中が熱狂する理由がようやくわかったような気がする。ただしその熱狂振りはワインの値を吊り上げ、その価格は前年比、村名で1.5倍、一級で2倍、特級で3倍以上となっている。さらにネットでは10万円、20万円で取引されているようで私には全く無縁の存在になってしまった。ただ今宵のように徹夜して並ばずとも水平テイスティングが出来る環境に感謝するのみである。


<追加>5/15
 ACジュブレ・シャンベルタン。抜栓後すぐINAOへ。液温19.5℃。皮のエキスを感じるえぐいタンニンが、濃くって強いデュガのイメージに合致する。チョコレート香が漂うが、どうしても「浮いた感じ」が拭えない。果実味とチョコ香とうまみ成分の間に隙間があるような、何ともいえない統一感のなさが寂しい。時間と共にミルクとベリーが出てきて、ほっと落ち着く感がある。やはり2000デュガはデカンタが必要だろう。

 同一ボトルの残りをデカンタして10分後に試飲。甘くなっている。滑らかなタンニンが化粧パウダーに重なり、こなれた印象だ。ボトルから直接注いだときの「隙間感」はなくなっていて、しっぽりしている。ミルク、ベリーに加えハーブのようなアロマも感じられた。

 個人的な好みは断然デカンタしたほうだ。しかし、どちらもジュブレらしさはあまり感じず、アペラシオン不明な味わいだ。どうもこのワインには、ジュブレ・シャンベルタンを飲んでいる実感はなく、あくまでデュガを飲んでいるといった風合い。デュガはジュブレ・シャンベルタン以外のアペラシオンは造っていないので、それはそれでひとつの個性なのだろう。そして、ここまでフィーバーしているドメーヌもあまりないので、まずは話のネタにみんなで飲んで、気に入ったら大切な夜に飲むことを薦めたりしたい。デュガは確実にブルゴーニュのひとつの味を表現している。味の好みは、まず飲んでから、ということだろう。


以上


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