コシュ・デュリー
試飲日 2002年04月28日
場 所    神奈川県某所a     
照 明 白熱灯
種 類 フランス ブルゴーニュ地方AOCワイン
生産者 Domaine J.-F Coche-DURY (Meursault)
Vintage 1999
テーマ 完璧な味わい
ワイン VOLNAY 1er Cru

<味わい>
 抜栓後すぐINAOへ。ピノ・ノワールが達成し得る完璧な色合い。澄んだような透明感があり、美しく輝くまさにルビー色。決して濃いわけではなく、それでいて薄すぎるわけでもない、まことに上品な色合いである。香りもまた複雑で、この上なく上品。バターのような油脂分を感じつつブルーベリーの果実香が背中をくすぐる。時間と共に焦がしたチョコ、ケーキも出てくる。味わいは極めてシルキーで、絹のような飲みごこち。これぞフィネスであり、日本語では「品」としか表現できない寂しさに駆られたりする。タニックさはもちろん秘めているものの、豊かな果実味によってやさしく包まれている。このまろやかな気品は、ピノ・ノワールの皮が醸造途中には決して擦られることなく、自らの重みによってのみ醸造されたとしか言いようがない。抵抗感を感じることがない、するりと入り込む味わいだ。
 
 口に含んだ状態から旨み成分の豊かさに戸惑いすら覚える。たとえて言うならば、薄い色合いで有名なジャーク・セイスのそれを2/3に減らした上で、旨み成分を1.5倍に膨らませたような何とも言いようのない豊かさである。長い余韻は、ジャン・フランソワの満面の笑みを想像させる。完璧にして感動。想像するに、この味わいを他のワインに探すことは難しく、しいて言えば高級料亭で頂く上品なお吸い物(註)かもしれない。出汁の味わい。いや、やはり違うな。コシュ・デュリ節の極みは比類のないレベルなのだ。そして焼き鳥(たれ味のネギマ)にも合う不思議さ、ハーブ入りのソーセージパンにも合う不思議さ。ヴォルネイの大きな懐を感じさせる逸品でもある。

 ヴォルネイという奇跡の地に1999年というコート・ド・ボーヌの偉大なビンテージ、そして白ワインの双璧ジャン・フランソワ・コシュの赤ワインでの天性の才能。ワインの三大要素、畑・年・造り手が三位一体となった感動の一杯である。そしてヴォルネイこそコート・ド・ボーヌ随一の「繊細な優美」を持ち合わせる場所なのだと改めて実感する。

 ロブマイヤーの通称ヴォーヌ・ロマネグラスで頂けば、より一層複雑な奥行きが楽しめる。本来ならば数年後に味わうべきとの声もあるが、今宵こうして感動に包まれる。お招き頂いた某氏に感謝である。そしてワイン通よろしく、グラスを乱暴に回してしまったならば、決してこの繊細な味わいは堪能できないことも付け加えておこう。そんなことをしたら一気に味が壊れてしまうのだから・・・。


 
高級料亭に行った事はないので、あくまでも想像の範囲。こんなお吸い物があれば良いなと思えるほどのインパクト。無理は承知さ。



以上
 


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