ロマネ・コンティ
試飲日 2002年05月18日
場 所    神奈川県内某所k       
照 明 不明
種 類 ノーコメント
生産者 ノーコメント 
Vintage ノーコメント
テーマ ロマネ・コンティ
ワイン ノーコメント
 
味わい
 
エッジが泡立っているものの、熟成が進んだガーネットのような色合い。気持ち濁り気味の色合いは、せっかくのワインを慎重に扱えなかったために澱が舞ってしまったためだろう。少し残念だ。コーヒー香が勢いよく立ちこめ、バニラの風味も微かに感じられる。予想していたアジアのスパイスや黒系果実がほとんど感じられないのは、何ゆえだろうか。疑問を抱きながら口に含む。げげげ。インスタントコーヒーを入れた葡萄ジュースの味がする。まずい。ちっともビロードのような滑らかさがなく、それどころか粉っぽい、水に溶けきれていない雑味のある感触だ。酸味が立ち、酸っぱいワインの典型的な味。これはロマネ・コンティではない。失敗だ。ちっともおいしくない。天に聳える大魔王の如くの味わいは、完全に雲隠れしてしまっている。まだまだ修行が足りないと痛感せざるを得ない味わい。ちょっとだけ、がっかりである。そうちょっとだけ。


<プロジェクトR>

 2002年1月1日放送の「禁じられた遊び ロマネ・コンティ編」(註1)では、ロマネ・コンティの魅力に迫りつつ、ロマネ・コンティに似た味わいの飲み物の造り方を紹介している。番組によれば、380円のカリフォルニア産赤ワインに違いの分かるインスタントコーヒーを混ぜ、ロマネ・コンティの瓶に入れてサービスするだけで、「ビロードのような滑らかな味わい」や、「この前飲んだときより熟成が進んでいて良い感じ」のロマネ・コンティに近い味わいと、言えなくもない、飲み物になるという。これは試してみる価値がありそうだ。

 しかし、ワインをおいしく飲むために、を信条としている者にとって、AOC法、モラルの両者に反してまで、そんなことを試すことが許されるのか自問の日々は続いた。380円のワインも380円なりにまずくはないし、違いの分かるインスタントコーヒーも、毎日お世話になっているパートナーだ。裏切ることは出来ない。食べ物で遊んではいけない。バチが当たったらどうしよう。これは明らかに、生き方の問題にも抵触している。

 しかし、それとは裏腹に好奇心という厄介なざわめきが体に滞留しつづけてもいる。いかに正当的にロマネ・コンティ(風)を造るか。どうすれば許されるか。どうすれば「一食入魂」の精神に矛盾しないか。葛藤が続いたある晩、ふと思いついた。番組のビデオを見ながら造ってしまえば、「お笑い」ですませられないだろうか。実験の名のもとに、料理番組のレシピを見るかのように、洒落ッ気たっぷりに造ってしまえば後の祭ということになりはしないか。日本語の引用として意味が通じないが、まあそれはそれでよしだ。第一、番組の監修はあの堀賢一(註2)ではないか。資料提供は葉山考太郎(註3)だ。ワインを知り尽くした男が、提案するレシピ。これは「問題なし」ということで手を打ってしまえ。ポン。ポン。

 というわけで、コンビニに自転車を飛ばす。残念ながらカリフォルニア産は980円のしか売っていない。原産地は譲れても、380円のラインは譲れない。今回のプロジェクトRは、その価格「380円」にこそ最大の意義があるからだ。38万円 VS 380円。実に1000倍もの価格差を乗り越えて共通する味わいを探せ。980円のそれでは、387.7551倍の価値しかないではないか。そんなの、つまらない。おっ。隣の某国内メーカーの軽快タイプがジャストぴったんこで売っている。色はかなり薄いが、これがどう変わるのかいよいよ気持ちも高ぶってくる。コーヒーにもこだわりたい。やはりヴォーヌ・ロマネ村のワインとして、あの怪しげなアロマは必要だ。新鮮な風味の強いコーヒー、開けたてコーヒー、違いの分かるコーヒーには是非こだわりたい。そこで香味焙煎系のコンパクトサイズを購入。いざ勝負。

 キャップをくるくる開けて、瓶の中を除くと意外に隙間が多い。番組では大きな器に移してからかき混ぜていたが、このまま直接投入してもよいだろう。インスタントコーヒーの薄い銀紙に小指の先ほどの穴を開けて、二振り分入れてみた。う。失敗だ。コーヒーの粒が大きすぎてワインに溶けない。大きな澱のようになってしまった。振れば何とかなると思い、キャップを閉めてワインをごしごし振る。少しは溶けたかもしれない。まあこの位のワインになれば澱の味のうちだ。いざINAOグラスに注いでみよう。とくとくと音を立てながら、泡立ちの良いロマネ・コンテイ(風)が姿をあらわした。これぞ、原産地呼称統制法を無視したロマネ・コンティへの思いを根底(コンテイ)(寒)から覆す大技だ。番組ではこの後ロマネ・コンティのボトルに入れて、ワイン通にサービスし、上記のコメントとなる。ビロードのようなとか、熟成がどうしたとかの、もっともらしい感想が続いたりする。


<味わい>
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<反省>
 今回の敗因はコーヒーにある。水でも溶けるアイスコーヒー用にすればよかった。そうすれば濁りも解消できたはずだ。量も半分でよかった。香味焙煎ではなくノーマルタイプにすべきだった。香りがきつすぎて、コーヒーの香りしかしないのは痛恨の一撃を食らったに等しいだろう。またはINAOではなくブルゴーニュ専用グラスで楽しめばよかったのか。ロマネ・コンティをテイスティング用のINAOグラスで飲む人はいない。最高のワインには最高のグラスが必要だ。中途半端な偽造は、やらないほうがマシだった。やるなら徹底的に細部にこだわって、やらないなら本当にやらないという姿勢が必要だった。この失敗は手痛い。もう二度と許されない偽造だっただけに、この痛恨の失敗は遺恨となるだろう。やはり本物を飲んでこそ、本物が飲みたいぞ。ロマネ・コンティの1978 1985 1995を売っている店を知っているだけに、その思いは一層募る。ロマネ・コンティでしか表現できない官能の世界を、、、飲みたい。

 そして今回のプロジェクトRはひとつの教訓を残してあっけなく解散された。


<教訓>
 380円のワインとインスタントコーヒーは別々に飲んだ方がおいしい。
 

註 (敬称略)
.1 出演: 南果歩 八嶋智人 武居M征吾 構成: 小山薫堂
.2 ワイン インスティチュート オブ カリフォルニア駐日代表 著書に「ワインの自由」
.3 著書「ワイン道」では、違うレシピも紹介している。


以上



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