ドクター・ターニッシュ | ||||||||||||||||||||||
試飲日 2000年11月3日 | ||||||||||||||||||||||
<2001/12/15再試飲> 室温24℃・液温11℃・蛍光灯・神奈川県某所 A.P.Nr.2 576 742 105 00 黄色く透明感のある輝く金色。イエロー・リースリングそのままの色合いである。華やかなアロマがすくっと立ち上る。柑橘系を基調としながら甘いのにすッきり味わいは、前回と同様の感激がある。さすがリースリングである。うまい。ほぼ1年ぶりの再会に感謝である。 <味の印象> 透明感があり貴賓に満ちた金色は、食事の最後のひと時を楽しむのに最高である。この味を日常生活のアイテムで表現しようとするならば、収穫されたばかりのグレープフルーツを二等分して、その切り口に極上の砂糖をスプーンで塗り、一思いに頬張った感じである。柑橘系のシャープさがとても心地よく、程よい甘さが絶妙に混ざり合い、なんともいえない快楽がある。甘さにべとつき感は無く、極めてさわやかである。うまい。しつこくない甘さと、若干冷やし目にサービスされた口当たりも至福である。飲みやすいが、余韻が長い。酸味と甘味をしばらく口の中で弄ぶのも悪くない。 食後のデザートも悪くないが、このベルンカストラー・ドクトールのアウスレーゼが食事の最後に配慮された食卓は、非常に上品である。全ての料理を回想し、敬意が払われる。 <補足> このアウスレーゼはその甘さゆえ、食中酒としては飲みにくい。食事にあわせるには、甘さが舌に残るからである。甘いものは料理には合わない。しかもその甘さゆえ、量は飲めない。やはりアイスバインやトロッケンベーレンアウスレーゼのように食後に飲まれる逸品であり、わずかな量を味わえれば最高である。とはいいつつも、この味は大好きなので、かなりの量を戴いてしまったが・・・。ちなみにこのワインのアルコール度数は10.0%。普通のワインが13%前後なのに対し低く抑えられている。 また、ドイツワインの香自体は評価の対象から漏れてしまう。これはドイツグラスの開口部が広がっていることでも証明される。香と味わいに統一感が出にくいためでもあるが、香の要素を圏外にした上でもなお、その引き締まった味わいは世界のワインの最高峰に位置しているからすごい。フランスの銘醸とは別の領域でトップを取っているワインである。 このワインは一万円(税込み)である。六人で囲む夕食ならばひとり頭1,666円である。安くは無いが、けっして高くない。ドイツワインの五指に入るターニッシュ家のベルンカストラー・ドクトールがその価格で飲めるなら決して高くないと思うのだが・・・。 <ベルンカストラー・ドクトール> ドイツ屈指の大名醸ワインを産出する畑。ブルゴーニュワインのように複数の所有者が同名のワインを造り出すが、このターニッシュ博士家が最も有名であり、最も優れている。ドイツワインの名前は地名と畑の名から来ていて、ワイン都市ベルンカストルのドクトール(医者)畑から造られたワインという意味。村の名にerをつけて畑の名が後に続く。 このドクトール畑も由緒が正しい。14世紀の中頃、トリアー教のベームント2世が病に臥したとき、この村の農夫が南向きの斜面から造られたワインを差し出すとみるみるうちに回復したという。司教は褒美をとらせ、その畑に医者の名を名乗ることを許したという。 畑は3ha程だが、南向きの土壌と微気候によりドイツで最も評価が高く、地代も飛びぬけて高い。葡萄品種はイエローリースリング。 以上 |