アルノー・アント | |||||||||||||||||||||||
試飲日 2002年05月30日 | |||||||||||||||||||||||
<ブルゴーニュ・グラン・オルディナール>
蒸し暑いため冷蔵庫に2時間ほど放置した後、抜栓後INAOグラスへ。ややひんやりする程度の温度。赤みを帯びた明るいルビー色。エッジの透明感は気持ち広め。ボトルに目を戻すと細かい澱が瓶の内側に固まっている。一発目のアロマは何と表現したらよいのだろう。ペルナン・ロサンのヴォーヌ・ロマネ1995を彷彿とさせる腐葉土が湿ったような、少し嫌悪感を覚える臭みにも似た香りだ。時間と共になめし皮へと変化するので、もしこの香りに抵抗があるなら、グラスをぐるりと回してもよいかもしれない。縦揺れに2回程度で良いだろう。なめし皮に加えて、あんこで水羊羹を作ったような、そんな香りも漂ってくる。小豆を煮て、少し蒸らしたようなそんな、そんな水羊羹香(造語)だ。口に含めば、酸味を感じる。えっ酸っぱいと思いつつ口に含んでいるとじわりと甘くなってくる。若干中途半端な渋みも口の中で行き場を探す。しかし、ごくりと飲みこむと、残っているのはうまみ成分だけ。なんだこれ。酸っぱいのか、うまいのかよく分からない。余韻も短いつもりで飲んでいるのに、意外に長い。おや。やっぱりうまい。うまいじゃないか。そんな愚痴にも似た呟きが、自分の鼓膜を震わせたりする。 アルノーアントはなぜこのワインを先月蔵出したのだろう。普通1996のグランオルディナールはすでにこの星から消滅しているはずなのに。早飲みタイプの代表格であり、何も考えずにぐびぐび飲む限りなくテーブルワインに近いAOCワインなのに、である。しかも何でこんなに高いのだろう。普通の倍くらいの価格だ。このクラスのワインで2000円以上するのはアンリ・ジャイエなど僅かしか見たことがない。びっくりだ。 1996年の2002年蔵出で、値段も倍。そうなると俄然興味が沸きまくる。1992からワインつを造っているアントの4年目の作品をこの舌で味わわずに、どの舌で飲めというのだ。そんな圧力を真摯に受け止めて、今宵自宅で開けてみた。結果は・・・・うまい。はじめの香りさえなくなれば、ストレートな味わいに誰もがうまいと絶賛しそうな勢いがある。万人受けするタイプであり、奥深さこそないものの、このクラスでこれだけ楽しめれば何の文句もない。ちっょと変わった変化球を打ち返すような、そんなへんちくりんな気分も楽しめるから、これはこれでありなのだろう。 もう一本買って、このへんちくりんな変化球を誰かに味わってもらいたい。そんなワインである。へんなの。 以上 |