ドミニク・ローラン | |||||||||||||||||||||||
試飲日 2002年06月07日 | |||||||||||||||||||||||
<ポマール 1級 エプノー 1996> 冷房の効いた部屋で抜栓して40分待ってからロブマイヤーグラス(通称ミュジニ No.3)へ。熟成が始まりつつあるガーネット系を配するふくよかなルビー色。エッジにムラサキはなく、熟れた印象を受ける優雅な色合いだ。グラスから立ち上る、なめし皮の甘い香りが力強い。熟した黒系果実、耕したばかりの土壌香もじっくり存在する。ローラン特有のいわゆるウイスキー香や樽香は感じられなかった。口に含めば、うまみ成分の塊。柔らかく、しなやかで、奥深い印象を受け、思わず「うまい」と唸ってしまう。口に含んでからすぐには飲みこまず、しばらく口の中で弄ぶと一層うまみが引き出てくる。熟した果実の豊かな味わいと滑らかなタンニンが融合し、複雑で心踊る味わいとなって口の中をいつまでも漂っているからだ。時間と共にミルク香も加わって、より一層複雑味が増してくる。途中でへたることなく、ぐいぐい攻めてくる味わいはコート・ド・ニュイの特級を思わせる。これは凄いポマールだ。そしてドミニク・ローラン史上最高のワインとして太鼓判をどしどし押したくてしかたがない(ん。日本語として微妙だ)。とにかくすばらしい。何の文句も言いようのない完璧に近いポマール。先日のポマール大会でこのワインがあったなら、確実にナンバーワンの座を射止め、他のポマールを遥か彼方に突き飛ばしてしまったであろう勢いだ。一緒に飲まなくて良かった。そう思わずに入られないほどのメッセージをドミニク・ローランは発している。参った。この味には本当にビックリだ。 このポマールは通常のポマールよりも3倍近い値段がついていた。何故そんなに高いのか。飲めば納得せざるを得ない。新樽200%で有名なローランが、最上のキュベを高値で落札し、自分の納得できるワインに仕上げるこだわりが、ヒシヒシと伝わってくるからだ。最高のポマールのためには金に糸目はつけないのだろう。金で解決できる問題は、ローランにとって何ら苦痛ではなく、最高のポマールを造るために何をすべきか、ローランの静かな闘志がワインから溢れてくるような、そんな味わいだった。そのための代償を消費者が支払うことになっても、それはやむを得ないことなのだろう。金額以上の心の揺さぶりをローランが伝えてくれるのだから。土の唄のひとつの表現方法を見るような思いがして、豊かな夜は深まりを増していった。そして財布は軽くなった。 2002年4月セラー蔵出。 パーカーズポイント = 91-93 (低いなぁ) 以上 |