＜マジ・シャンベルタン　キュベA　1998＞
　軽く冷やして冷房の効いた部屋で抜栓して１時間待ってからINAOグラスへ。褐色まではいかない暗めの美しいルビー色。やさしい土壌香にベリーなどの黒系果実が香っている。樽のニュアンスも感じられる。口に含めば、本格的な辛口ワイン。全てのベクトルが中心に向っているような凝縮感があり、じわりと滲むようなうまみ成分に身動きがとれない。タンニンはしっかり溶けこんでいて、荒々しい基調に滑らかさを加えたかのような絶妙のバランス感覚だ。濃厚な味わいにして、くどくなりすぎず、これぞグランクリュの実力を真正面からぶつけてくる。アルコール感はしっかりしているが、一時間待ったおかげでその嫌な部分が消えており、じわりとしたおいしさを堪能できる。すばらしいマジ・シャンベルタンである。

　ドミニク・ローランは特級マジ・シャンベルタンに二つのキュベを造っている。AとBだ。二つのキュベは味わいに相当の差があるようで、ブレンドせずにあえて別々のキュベとしてリリースしている。それぞれのキュベの大元のドメーヌ名は不明だが、キュベAがここまでおいしいと、俄然キュベBにも興味が沸く。なぜキュベBのほうが高いのかも知りたいところだ。しかし両者とも生産量が極端に少なく、ほとんど幻化しているところが辛い。
　

以上