ジャイエ・ジル | |||||||||||||||||||||||
試飲日 2002年07月26日 | |||||||||||||||||||||||
<1996 ニュイ・サン・ジョルジュ 1級 オーポワレ> 抜栓後INAOグラスへ。真っ黒くろすけの濃い色合いがようやくガーネットに変わりつつあるような、そんな何とも不思議な色合い。ピノ・ノワールとしては断然濃いいが、ジャイエジルとしてはやや茶色みがかっているかもしれない。これが6年の歳月というものなのだろう。グラスに鼻を近づければ、コーヒー香、チョコレート、土壌香といったジャイエ・ジル特有のあの定番系の香りが立ってくるが、いつものジャイエ・ジル節は少し抑え気味かもしれない。グラスをゆっくり傾けると、ねっとりとしたとろみ感が興味をそそられる。黒系果実を少し砂糖漬けにしたような甘味は、タールの風味にあいまって非常に味わい深い。タンニンも、静かに熟成モードに入りつつある果実味とともにいい具合に馴染んでいる。エレガントな余韻も長く、時間と共にミルクや焦がし香が現れてくると、ピノ・ノワールの新たなる一面が垣間見られたようで、非常に楽しくなってくる味わいだ。抜栓直後は女性的なやさしい基調だったはずなのに、時間と共に男性的な力強い味わいに変わってくる。いい。ニュイ・サン・ジョルジュのひとつの曲線カーブとして非常に楽しいワインだ。非常に優雅なひとときを変わりゆくジャイエジルと共に過ごすことに、何ともいえないピノ・ノワールの魅力を感じたりもする。 今回のワインは裁判沙汰になったいわく付きのワインである。AOC法の補糖制限を超えた疑いが持たれ、長い間ジャイエ・ジルのセラーに封印されていたらしい。補糖問題が解決し疑惑が解明され、発売可能となったものの、飲み頃を迎える今日まで、理想的な熟成を達成するために敢えて、今日までひっぱたものという。情報によれば、このワインは1990年と同格の評価が与えられ、ニュイ・サン・ジョルジュの1級としては高得点の94点がつけられているという。何故そういういわく付きワインが堪能できるのか不思議だか、今回のワインもおいしい頂いたので、酔いが冷めたら、裁判資料でも探してみたいものだ。 ところで補糖問題を問うほどに、このワインに何かあるのだろうか。深みのある充実した味わいにイチャモンつけたくなる気持ちも分からないではないが、真相は解明されたようなので、今ここでひっくり返したところで、ワインが楽しくなくなるばかりだ。今宵もまたおいしくワインを頂くために、ここはひとつ要らぬ議論は避けて、ゆっくりと残りのワインを味わいたいものである。 2002年6月セラー蔵出 以上 |