シャンテメルル
試飲日 2000年11月22日
場 所    神奈川県内某所     
照 明 白熱灯
種 類 フランス ブルゴーニュ産AOCワイン
生産者 Domaine Chantemerls (Chablis)
Vintage 1999
テーマ シャブリ。
ワイン Chablis 1er Cru Fourchaume

<10ヶ月後に再び>
 2001年9月4日・都内某所・白熱灯・グラス温度17℃
 やっぱりおいしい。このシャブリはつくづくおいしい。同じワインを10ヶ月後に飲む機会に恵まれ、この感激の夜はうれしい限りである。

 残暑のなか、本来ならもとギンギンに冷やして飲みたいところだが、このシャブリは17℃というやや高めの温度にして、どっこいすばらしい爽快感がある。温度が高いとワインの全体像がぼやけるものだが、このワインはフルーティな飲み応えと、引き締まった味わいを堪能させてくれる。雑味感がなく、しっかりといい状態で保存されていること自体が感激に値する。ステンレス発酵のありがたさが伝わってきて、なんともうまい。本当にうまい。このシャブリはいいぞ。食卓のともにこんなワインがあったら、きっと幸せさ。


<味の印象>
 えっ。これがシャブリ? これがこのワインの第二印象である。以前からこのワインは楽しませてもらっていたが、今まではいわゆるシャブリ-シャブリしたワインだった。冷たくサービスされたシャブリはシャープな飲み応えとミネラル的で火打ち石系の香に満たされ、切れの良さが売りの辛口白ワインであると信じていた。
 しかし今回は違った。みなのテイスティングが終わった頃に遅れて試飲したためか、晩秋の湘南某室の暖房がやや高めだったためか、ワインの温度がかなり高かった。普通この温度なら生ぬるさが口に残る。あるいは間延びして締りのない味になりやすいが、このフルショームは実に芳醇であった。とろみ感が増し、ふくよかな感触に包まれた。香も柑橘系はなく、ハチミツをほのかに感じた。うまい。やさしい金色も目にやさしく、しばらくの余韻も楽しむに値する。この味をコート・ド・ボーヌで求めたら数倍しそうだ。なんともお得なワインであり、シャブリの新しい発見である。さすがこの地区のトップ3に入り込んだだけのことはある。
 1999年はこの地区のグレートビンテージであり、シャブリの名手の技がこの快感を与えてくれるのだろう。実にいい体験をした。感謝である。


<フルショーム>
 シャブリ地区の一級畑であり、特級への昇格を希望する人も多い。畑は全ての特級畑の北側に位置し、立地条件は良い。ただしフルショームを名乗れる畑はフルショームのほかに、ヴォピュラン、コート・ド・フォントネ、ヴォロラン、ロム・モールの各畑があり、今回のワインがどの畑からのものかは現時点では分からない。少し調べてみたい。とにかくこのグループ畑名を名乗れることがシャブリを複雑にし、複雑な分だけ評価は上がりづらい。それはワインの要素が畑の素性に影響されるものだからである。ワインは場所が一番なのである。
 ではなぜシャブリは複雑なのか。それは知名度の高さゆえの商売上の問題だろう。一部の人間にしかわからないコート・ド・フォントネを名乗るより、有名なフルショームを名乗るほうが高値で売れる。商売の当然の流れである。逆にグループ名を許すレベルでしかないともいえる。まあ、うまいが一番ではあるが、同じフルショームでもピンからキリまでありそうだということは覚悟しておこう。最高のものに出会えたら、本当に幸せに浸れるぞ。このシャンテメルルのワインのように。新進のシャンテメルルも都内のデパートでも見かけるようになったので、比較的手に入れやすい。これはひとえに某美人女史の営業力のなせる技だろうか。


<補足>
 このシャンテメルルはラブノー、ドーブィサに次ぐシャブリの造り手である。シャブリの多くがクローンのシャルドネを使っているのに対し、三大あるいは四大ドメーヌといわれる造り手は純正種からしかワインを造らない。ワインが自然の賜物である限り、この事実は重要で、トップ評価ならしめる最大の要因でもある。クローン種は最高の葡萄の木のコピーであり、その品質は高い。しかし一般受けする味わいには抵抗感もある。シャブリという抜群の知名度とクローン化された葡萄のおかげで、この地区での商売は安定している。そのためにその安定にあぐらをかきやすくもあり、シャブリ全体の評価も低空飛行を続けている。
 このシャンテメルルの台頭はシャブリファンにとってはうれしい。なぜこのドメーヌがクローンに走らなかったかは不明であるが、その決断のありがたみがワインから伝わってきて、私を少しうれしくさせる。

以上


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