ジャン・リケール
試飲日 2002年08月16日
場 所    自宅       
照 明 白熱灯
種 類 フランス ジュラ地方AOC白ワイン
生産者 Maison Jean Rijckaert (Leynes)
Vintage 1999
テーマ ビックリ仰天
ワイン ARBOIS En Paradis VV (Savagnin)
 
<アルボア>
 
抜栓後すぐINAOグラスへ。液温18℃。透明感のある薄い金色。柑橘系のアロマに混ざって、樹脂、バニラ、金木犀系の花、マスカットが複雑に絡み合ったような不思議な香りが漂っている。なぜかコーヒー香も感じられる。口に含めば、とろとろのとろみ感。例えるならば、某所からのお叱りを覚悟で例えれば、これはまるで粘土だ。口の中にあるうちから、とろとろモード全開にして、思いきってごくりと飲み込むと、ひとつの塊らしきものが、のど元を通り過ぎる感触だ。同じ粘土でも水分のないパサパサとした粘っこい粘土のため、完全に一息には飲み干せず、舌の周りに数ミリずつ残してしまったかのような、そんなねっとり感だ。それでも酸がしっかり存在しているので、バラけた印象はなく、長熟タイプを彷彿とさせる充実感も感じられる。この驚きは、ヴィオニエ種を初めて飲んだときと同様の、いやいや、それ以上の仰天ぶりだ。余韻と言って良いものだろうか、このねっとりした感覚はいつまでも消えることなく、漂いつづける。恐らくは、臭みのある川魚料理や白身肉系の料理に合わせれば、意表をついた不思議なマリアージュに感動するかもしれない。

 気分を換えて、空冷で12℃まで下げる。今度は柑橘が全面に現れ、マスカットはやや後退する、そんな香りになっている。口に含めば、シャルドネではない独特の苦味が支配的で、まあこんなモンだろうと思ってしまうところが悲しくなる。冷たいせいで、粘り気はなくなっていてスイスイ飲みこめる、と思いきや、最後にゴクンと飲み込んだ後に押し寄せるねっとり感が、笑っちゃうほど豪快だ。なんてワインなんだ。ビックリ仰天。だ。

 この時期は油断しているとグラスの温度はすぐに上昇する。ふと気がつくと24℃になってしまった。この温度だとさすがのリケールもお手上げだろうと思って口に含む。うん。やっぱりお手上げだ。柑橘がメインにあるものの、全ての要素がバラけてしまい、うすらぼんやりとした飲み物になってしまった。ここは再び空冷で10℃くらいまで冷やしたいところだ。

 冷やすとやっぱり粘っこい。これはこれで凄いワインだろう。恐らく、今後5年間は決して忘れないであろう味わい。明日も同じワイン飲むよと薦められても、いつになく固辞する自分に気がつくだろう。そう。このワインは5年間忘れられない味なのだから、5年間は遠ざかりたいワインでもあるわけだ。不思議だ。ビオニエとはまた違った感動が、夏の夜空に乾杯さ。この込み上げる感動をぜひ。

 ところで、キュベ名と思われるEn Paradisを直訳すれば、天国にて。なるほど。こんな天国があっていいと思えるところが凄い。


<補足>
 今回のジュラ地方のACアルボワはサヴァニャン種から造られている。この品種はヴァン・ジョーヌの単独品種として有名である。ヴァン・ジョーヌは最低六年間は目減り分を補充しないで樽熟させるこの地方独特のワインであり、特殊なワインとしてソムリエ試験にも出題されている。今回は普通のスティルワインACアルボアとしてリリースされている。ただし樽熟3年を擁し、セラー蔵出直後のワインである。

<おまけ>
 エチケットから読み取れる情報としては、アルボアのピエール・モランが葡萄栽培をし、ワインの醸造からボトリングまでをジャンリケールで行ったワインである。
 

<おまけ2>2002/09/28
 糠漬けに完璧に合う。
 この組合せには日本人に生まれてよかったと感謝せずにはいられない。


以上



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