| DRC | ||||||||||||||||||||||
| 試飲日 2000年11月26日 | ||||||||||||||||||||||
＜グラン・ゼシェゾー1997＞ 紫系の落ち着きのあるルビー色。色合いはこの村にしては濃さを感じるが、おそらく照明の影響が大きいためだろう。香は目に沁みるほどインパクトのある複数な花のアロマ。遠くにバニラ香も感じられ鳥肌が立つ。香水も若干あるようだ。味わいは、これまたすこぶるよい。濃密な感触と口全体の細胞や粘膜を刺激するタンニンは、極上の辛口ワインの典型である。しかも辛さのなかにしっかりとしたやさしい甘味があり、飲むほどに悦びが増す。しばらく口の中で濃厚さを楽しんだ後で、ゆっくりと飲み込む。うまみ成分が心地よい。余韻も長い。飲み込んでもなお、顔全体にゆらゆらと留まるうまみは、うっとりと夢心地である。さすがDRCである。グラス一杯の量でも一時間以上楽しめる名作。グラスに残った僅かなワインが最後の力を振り絞るように、ラストの香はニッキのような澄んだ香に変化していて、消えゆく最後のメッセージをしっかりと飲み手に伝えてくるその実力にただただ驚嘆するのみだ。 ボトリングNo.02199 / 8076 ＜リシュブール1995＞ 直前のグラン・ゼシェゾーを遠い彼方に吹き飛ばす勢い。すごい。立ち込める煙系の香に酔いしれることしばし。鳥肌も再びである。色合いは輝きのある黒系のルビー色が基調。歯茎を刺激するタンニンは、より強く、力強さがある。果実味も上品で、深い奥行きがある。このバランスがすばらしい。ワインの要素が全てに於いて卓越している。バランス感覚のすばらしさは、この村の底知れないパワーなのだろう。甘さを奥に携えた辛口の飲み応えは、自然と目を閉じさせる。このワインの向こう側にはどんな景色もいらない。暗黒の世界で、このワインを自分の世界だけで堪能したい。このワイン以外には何もいらない。ただこのワインが口の中にあってくれさえすればいい。これぞ極上の一杯である。うまい。そう思って目を開けると、目の前に幸せそうな顔がある。今度はこの味を共有できた悦びがやってきた。不思議な感覚だ。一人で飲みたいのに、共に味わうパートナーにもいて欲しい。ワインは食卓を囲んで飲まれるお酒である。この酒が、このテーブルに飾られる時、やはり至福の時を共感できるのだろう。 ボトリングNo.09122 / 10075 ＜ラ・ターシュ1996＞ 前二本との間には深く、広く、長い川が流れている。決して超えられない一線。もう戻れない世界である。格の違いを堂々と見せ付けられた。ぎっしりとした濃縮感があり、全ての要素をぎっしりと詰め込んだ濃厚さがある。色も想像以上に濃い。黒系のルビー色である。上品な果実香に加え、やさしい動物香も感じられる。複雑にして雑味がなく、優雅にして繊細であり、上品にして有り余る力強さがある。恐ろしいほどにうまい。余韻の長さは天下一品だ。このラ・ターシュにはモンスターワインの片鱗があるという。このラ・ターシュが20年・30年またはそれ以上の歳月を得て熟成の頂点に到達したとき、食文化の頂点を極めるのだろうか。人類の感じ得る最高の至福が約束されているのだろうか。是非とも体験したい。 世界一のワインが産出されるブルゴーニュにおいて、その頂点に君臨するのは、かのロマネ・コンティである。ただ10年に一度その座を譲るワインがある。それがこの1996年のラ・ターシュである。1996年という偉大な年で世界のトップを極めたワイン。ついにこのワインを飲んでしまった悦びと、これが世界の頂点の味であるのだという確認が何よりの貴重な体験である。 ボトリングNo.07197 / 28373 ＜補足＞ 今回の超豪華テイスティングを体験して思うことがある。ロマネ・コンティの存在である。ラ・ターシュ1996年を超えるワインはロマネ・コンティしかない。しかもただのそれでは満足し得ない。グレート・ビンテージのそれは、例えば1978年ものなら一本100万円。100点満点で100万円だ。決して高くない。んんん。金銭感覚が麻痺している。どうやらいけない世界の住人になってしまったかもしれない。初心に戻って、1000円台のワインに悦びをみつけよう。ある意味で今回のワインは一区切りつけられるワインである。 今回のDRCスペシャルテイスティングに関し、関係各位に感謝申し上げます。 以上 |
