ドミニク・ローラン
試飲日 2002年08月26日
場 所    神奈川県某所
照 明 蛍光灯
種 類 フランス ブルゴーニュ地方AOC赤ワイン
生産者 Dominique Laurent (Nuits St Georges)    
Vintage 1998
テーマ ローランのヴージョ
ワイン CLOS VOUGEOT

<クロ ヴージョ 1998>

 抜栓後INAOグラスへ。液温18℃。茶色みがかった深いルビー色。いわゆる「濡れた子犬」と言われかねない動物香の生臭さが気にかかったので、軽くぐるりと手首を返す。ここでソムリエよろしくグルングルンと回してしまったら繊細な味わいが楽しめないので、手首を返してしばらく待つことに。すると子犬があっちへ去って、そこになめし皮が落ちているような感じになった。この感覚も面白い。そしてドライプラムの香りが鮮明に漂いはじめ、力強いクロ・ヴージョを予感させてくる。口に含めば、クラシックな味わい。変に媚びることなく、果実の甘味自体で勝負してくる。このグイグイ登る力強い味わいは、歯茎を十二分に刺激しつつ、奥深い魅力を秘めている。口にまとわりつくようなうまみ成分は、油脂分たっぷりの大きなボリューム感だ。ゴクリと飲みこめば、うまみ成分が食堂を通過していくのが分かるほど。この消えない余韻は、ローランのグラン・クリュの為せる技だろう。乾いたままの歯茎に余韻を重ねていると、いつしか汗がにじみ出てくる。クロ・ヴージョの潜在的能力が細胞に刺激を与え、汗となって現れてきたのだろうか。これほどのワインはなかなかない。

 気分を換えて、リーデルソムリエシリーズのブルゴーニュグラスへ。おお。こちらは滑らかな黒系果実の味わいが基調にあって、すいすい入ってくる。INAOで感じた角張った印象はなく、非常に優雅なワインになっている。

 おそらくは今後何年も熟成しつづけるこのクロ・ヴージョを今楽しむならば、デカンタをするなり、抜栓後2,3時間待つくらいの余裕も欲しかったりする。しかし個人的な好みからいえば、INAOグラスの大胆で荒っぽい果実味も捨てがたかったりするから、ワインは面白く奥深い。その瞬間瞬間でワインを楽しむ。それぞれの味わいの違いを認識すれば、異なる味わいを共有できる。小人数でこのワインを囲み、半分はボトルから、残りをデカンタして、両者の違いを楽しむのも、素敵なワインの楽しみだろう。


以上
 


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