ドメーヌ・ドニ・モルテ | |||||||||||||||||||||||
試飲日 2002年09月03日 | |||||||||||||||||||||||
<ジュブレ・シャンベルタン 1級 ラボサンジャーク 1995> 抜栓後INAOグラスへ。液温18℃。かつて真っ黒に近かったルビー色が、7年の歳月を経て褐色になりつつある色合い。黒系果実が重量感をもって漂い、甘草を干して粉にしたようなニュアンスも漂い、時間と共に草と湿った土を丁寧に混ぜ合わせたような香りになっていく。口に含めば、男性的で筋肉質な味わいが、ドニーの力量によってやさしくコーティングされたかのような味わい。野暮ったさや渋っぽさがこの畑のテロワールを表現しつつ、滑らかな食感でやさしく包み込んでいるのだ。勢いのある力強い果実味が若々しさと熟成感の両者を併せ持ち、お互いを融合させたかのような印象だ。時間と共に湿っていた土のニュアンスが乾き、さらに焦がし香も出てくる。ラストはスパイス的な要素も感じられ、時間と共に移り変わる香りにすっかり魅了されてしまう。口に含んだときの満足感と長い余韻は、なんとも言い知れず、この畑が特級でないことに不思議を覚えたりもする。 久しぶりのドニ・モルテであるが、やはりすばらしい。彼の気持ち甲高い声が耳に聞えるようで、楽しくなってくる。今回のラヴォー・サン・ジャークは力強い黒系果実味が特徴だが、その特徴を着実に表現しつつも、ドニ・モルテ節をいかんなく発揮している味わいだ。ある意味予想された通りの味とも言えるので、彼のワインとこの畑を別々に思い起して、それを混ぜ合わせたような印象ではある。しかしこの自分の予想をはるかに越える味わいは、自分のひいたラインを大きく飛び越え、非常に優雅である。 総合的にみれば、土壌香のニュアンスがかなりあるため、このワインが一般受けするかどうかは微妙だ。ドニ節のやさしさがあるとはいえ、ジュブレの大胆な一級畑の特徴が、飲み手の好みに立ちはだかるかもしれない。好きな人は滅法好きだが、苦手な人は、「ちょっと」といって飲み進めないかもしれない。そんなときはやさしく右手を差し伸べて、代わりにゴクリと飲んであげよう。ただこの味に嵌ってしまうと、ジュブレ・シャンベルタンの驚異的な魅力に足を突っ込んだことになるので、注意が必要かもしれない。 2002年8月セラー蔵出 以上 |