ガイヤ | ||||||||||||||||||||||
試飲日 2000年11月26日 | ||||||||||||||||||||||
<味の印象> オレンジを感じる深みのあるガーネット系の赤。優雅なグラデーションが目に気持ちいい。とろみもあり、上品な趣がある。11年の時を感じるにふさわしい色合い。口に含めば歯茎に染みる渋みも心をときめかせる。時間が経ってもへたらない力強さは偉大なワインの証しである。酸とタンニンが豊かで、そのバランスもすばらしい。 ボデガス・ベガ・シシリア ウニコを彷彿とさせる。ウニコから甘さを取り除き、果実味をプラスしたいたような味。これぞネッビオーロ種の傑作である。1989年はピエモンテの超グレートビンテージ。その飲み頃を迎えた傑作を飲む幸運に感謝しつつ、豊かなワインを飲み干した。 <ガイヤ> 当主のアンジェロ・ガイヤは1996年ビンテージからこのバローロ・スペルスとバレバレスコの高名な3つの単一畑(下記参照)の生産をとりやめ、前年にDOCになったばかりのランゲとして生産している。 バローロ・スペルスの生産終了は耕作契約が終了したであるが、バルバレスコの3つの単独畑をDOCGバルバレスコとしては生産終了した意図は不明のままだ。ワイナート誌によれば、バルベーラ種を数パーセントブレンドしているためだが、その根拠は文脈からは判断できなかった。DOCGバローロは100%ネッビオーロ種から造らなければならない。ガイヤがバルバレスコとしてでなくDOCワインとして生産するのはDOCGに対する対抗からなのか。それともワインの味は法律が決めるのではなく、生産者であるという彼の主張を証明するために、あえて偉大なバルバレスコ単独畑を選んだのだろうか。 ブルゴーニュではシャンベルタンに他の葡萄品種をブレンドする生産者はいない。ピノノワールのみシャンベルタンを名乗れるからだ。高値で売れるその名を捨てる生産者はいない。特級シャンベルタンよりもテーブルワインが評価されることはブルゴーニュではあり得ない。 イタリアもワインは法律によって管理されている。しかしサシカイヤのようなスーパーテーブルワインに代表されるように、法律と味の評価には整合性がない。そこに目をつけたのが、イタリアを代表する造り手のアンジェロ・ガイヤなのだろうか。スーパートスカーナを批判しながら自らもトスカーナでワインを造る、その遊び心があたらしいイタリアワインの最高峰を目指しているのだろう。 この銘醸バローロ・スペルスは1995年を最後に今後造られない。今回のテイスティングで、その実力をいかんなく発揮したワインは保管されている在庫分のみだ。非常に残念でもあるが、新しいアンジェロ・ガイヤの野望に期待したいところである。 ちなみにアンジェロ・ガイヤはフランス産の小樽をピエモンテで初めて使用したり、カベルネ・ソービニヨンやシャルドネを採用したり、革新的な行動で知られている。ガイヤの看板はバルバレスコであり、その実力は世界のワイン愛好家を虜にさせている。 <参考> DOCランゲに変更されたDOCGバルバレスコの単独畑 BARBARESCO Sori Tildin 1967年発表 BARBARESCO Sori San Lorenzo 1970年発表 BARBARESCO Costa Russi 1978年発表 以上 |