シャトー・メルシャン | |||||||||||||||||||||||
試飲日 2000年12月2日 | |||||||||||||||||||||||
<味の印象> これは驚きである。日本が世界に誇れる唯一のワインたる実力を思い知る。黄色がかった金色が静かに輝いている。きらびやかさはなく、25年の時の重みを穏やかに伝えてくれる。トロみ感が豊かで、グラスの涙は自らの重みにゆるりと反応する。甘いシロップにしばらく漬け込んだあと、日陰干ししたような乾燥した草の香。本来は辛口ワインであるが、完璧な熟成のおかげで、やさしい甘味が心地よい。苦味も耳の遠くで感じるが、そっと奥にかくれていて、その奥ゆかしさも楽しい感触だ。酸もまだまだしっかりとしている。非常に味わい深い。余韻も長く、うまみ成分のために唾液が染み出してくる。大変おいしい。 <ワインについて> このワインは日本に10数本しか残っていない幻のワインである。日本中捜しまわっても某所にしか保管されていない逸品である。今回はじめて試飲する機会に恵まれた。感謝である。23年前の発売当時ですら5,000円の高値をつけたという。当時の高級ワインが500円だった頃の逸話である。 日本では世界中の葡萄品種によりワインが造られているが、固有の品種はこの甲州である。古来中国大陸を渡りこの地に根を張った葡萄品種は、世界中の主要品種と比べても遜色ない。世界に誇れる品種である。メルシャンは「信州桔梗ヶ原メルロ」や「城の平カベルネ・ソービニヨン」など国産で最も高値をつけるワインを造っているが、その葡萄品種は日本の固有品種ではなく外来種である。メルロー種のトップはシャトー・ペトリュスであり、カベルネ・ソービニヨン種はボルドーの五大シャトーである。それらをメルシャンが上回ることは絶対にあり得ない。しかし甲州なら世界を取れる。それが固有品種の最大の強みであり、偉大なところでもある。 ワインというとヨーロッパやカリフォルニアに目を奪われがちだが、わが国にも世界に誇れるワインがある。この事実は大変重要である。日本人としてワインを楽しむ上で、自国のワインを知ることは有意義である。しかもそのワインがこんなにおいしいのである。とてもうれしい限りだ。ちなみに中国のワインは土壌に水銀が含まれているため、ワインとしての評価はない。 以上 |