プスドール
試飲日 2002年10月07日
場 所    神奈川県大和市 レストラン・サカモト       
照 明 白熱灯
種 類 フランス ブルゴーニュ産AOC赤ワイン   
生産者 Domaine de la POUSSE d'OR (Volnay)
Vintage 1990
テーマ プスドールの1990
ワイン Santenay 1er cru Clos Tavannes
 
<サントネ クロ・タヴァンヌ 1990>
 抜栓後しばらく置いた後推定リーデルヴィノムシリーズ・シャルドネグラスへ(違うかも)。黒褐色系の濃い色合い。エッジに透明感はあるものの色褪せない深みのある色合いだ。熟した黒系果実香がまだまだ存在し、それを覆うかのような内臓臭系の動物香と土壌香がふくよかに香る。内臓臭と言っても嫌味な所はまったくなく、かえってうれしくもある。時間と共に紅茶も現れ、黒糖を黒系果実の果汁で溶かしたかのようなニュアンスも楽しい。ひいてはコーヒー香も現れ、実に面白みのある香りの連続だ。この深みのある香りは、さすが超グレートビンテージの1990年ゆえだろう。口に含めば、肉付きの良さとまだまだ成長しそうな勢いを感じる。口に含むごとに唾も溢れ、しっかりとした構造にこれがサントネであることをしばらく忘れさせる。やや野暮ったさは否めないが、それを力強さと読み取れば、これもまたワインの懐の深さだろう。角がとれ丸くなったタンニンがあと数年の熟成を期待させる。さすがにアペラシオンゆえに余韻こそ短めだが、それでも偉大なワインとして記憶に留めるには充分の味わいだ。

 今回はレストランにて頂戴し、いろいろあってほとんど一人で一本開けさせてもらった。サントネイの動物的な要素が、当然ながらフォアグラとばっちし合い、至福のときであった。某氏に大感謝である。そしていろいろご心配頂いたサカモトシェフご夫妻にも感謝してやまないところだ。

 実はこのワインを頂くにあたって、私はサントネイSantenayではなく、ヴォルネイVolnayと思ってしばら飲んでいた。プスドールはヴォルネイの勇者であり、テーブルの遠くに置かれたボトルの--NAYのスペルが勘違いさせていた。ワインの力強さは天才ジェラール・ポテル(註1)と1990というビンテージゆえだろうと思っていたが、どうも動物的なニュアンスがヴォルネイのイメージに合わず、困惑していたのだ。ヴォルネイといえば、エレガントな繊細さを身上とするアペラシオンにして、大のお気に入り。それにしてはどうも違和感がある。この野暮ったさはなんだろうとワインを口に運ぶたびに思ったりした。しばらくしてこれがサントネイと分かった時には、ジェラール・ポテルがサントネイを造っていたという事実に驚きながらも、両者の違いを感じることができた喜びに、少しだけうれしくなったりした。と、同時に視力が低下していることに寂しさも覚えたりした。

 往年のドメーヌ・ド・ラ・プスドールはすばらしい。しかし残念ながら市場に出ることはほとんどないので、次回いつ出会えるかわからないところが辛くもある。プスドール万歳である。ちなみにオーナーが代わってからのプスドールは同じ名前(註2)にして、違うワインになっているので今回と同様の感動があるかどうかは疑問である。


註1
ジェラール・ポテル氏は1997年に他界。息子のニコラ・ポテル氏はニュイ・サン・ジョルジュ駅前でネゴシアン業を展開しているが、彼のオフィスにはプスドールの建物とジェラール氏の写真が飾られていた。


註2 
本当は少し違う。ジェラール・ポテル氏所有時代はDomaine de la POUSSE d'ORで現在のオーナーに代わってからは、La Pousse d'Or (Domaine Patrick Landanger)である。両者はそもそもエチケットが違うので、比較的簡単に見分けられる。現オーナーのランダンジェ氏は悪役紹介出身のような強面だが、顔に似合わず非常に親切で、とてもいい人である。



以上



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