ドニ・モルテ
試飲日 2002年10月22日
場 所    自宅       
照 明 白熱灯
種 類 フランス ブルゴーニュ産AOC赤ワイン   
生産者 Domaine Denis MORTET (Gevrey-Chambertin)
Vintage 2000
テーマ いとしのドニー
ワイン Bourgogne Cuvee de Noble Souche
 
<ブルゴーニュ 赤>
 抜栓後すぐINAOグラスへ。液温17℃。エッジにムラサキを配するやや赤みを帯びたルビー色。蛍光灯の下では黒さが目立つものの(写真参照)、白熱灯の下では明るく輝いている。赤系果実が気持ち熟したようなニュアンスがあり、バニラまでいかない木系の香りと乾いた土壌香がコンパクトに香っている。口に含めば、かなり小さな味わい。酸味と渋みのバランスが今ひとつで、まだこなれていない印象を受ける。口に含んだ瞬間の酸味と、しばらく口の中で、もてあそんだ頃の歯茎にまとわりつく渋みが少し残念だったりもする。口の中にとどめて、ほんのひと時うまみ成分を感じるものの、やはり渋みが全面に現れ、うーんと考えてしまったりする。余韻は短く、ACブルゴーニュにして多くを望むのは、ためらわれつつも、いとしのドニーよ、どうしたんだと問いかけたくなる味わいである。

 今回のキュベは高貴な切り株(noble souche)と名づけられたACブルゴーニュである。昨日たまたま渋谷駅周辺某所のワイン売り場で見つけた一品であり、そういえばドニ・モルテのACブルゴーニュの赤は今まで飲んでいなかったので、ちょいと買ってみたものだった。ACブルゴーニュで2000年ビンテージを占おうとは思っていないが、それにしてもこの味わいは少し残念である。

 おっと。フジテレビの「アルジャーノンに花束を」(註)の時間だ。しばし中断。

 それはユースケサンタマリア演じる主人公のハルが、ねずみのアルジャーノンのように天才に変わりつつある様が物語の展開を色濃くするように、このドニ・モルテのACブルゴーニュの2000年ビンテージは少しずつ変化を遂げていく。エグミにも似た渋みが徐々に滑らかさを勝ち取りつつ、木の香りにバニラと焦がしが加わるように、少しずつではあるが確実に変化していくワイン。ドニ・モルテ特有のチョコレート香とまではいかないけれど、その雰囲気を垣間見せるほどにはなっている。甘みにも似た感触が、渋みにダブるようで、なかなかにイケテいる。若干余韻も長くなっているようで、この変化もまたブルゴーニュワインの奥深さである。

 ACブルゴーニュというブルゴーニュワインのスタンダード的なワインであるがゆえに、ワイン自体の重みや個性を期待してはいけないが、決してこのクラスでも手を抜かないドニ・モルテは注目に値する造り手である。そして個人的には抜栓後1時間経過した頃が甘みを増した味わいが楽しめて好みだったりする。しかしアルジャーノンが衰えていくように、このACブルゴーニュもまた同じ運命をたどるのかと思うと、ドラマの予想される展開にせつなさをおぼえつつ、ワインの儚さを知るところである。

 今宵の「けいかほう告」はこれにて。


註 「アルジャーノンに花束を」
 ダニエル・キース原作 ユースケサンタマリア主演 毎週火曜日22:00より

 知的障害を持った若者が、ねずみのアルジャーノンと同じ手術を受け、ねずみと同じように徐々に天才になっていく物語(今宵はここまで)。そしてある時点からそのねずみが衰えていく様を、同じ手術を受けたがゆえに、主人公の悲しい運命が、涙なくして見られない名作中の名作。この世界的ベストセラーを脚本家の岡田惠和はどう描ききるのか注目のドラマである。


以上



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