マーセル・ラピエール
試飲日 2002年10月23日
場 所    神奈川県某所   
照 明 蛍光灯+白熱灯
種 類 フランス ブルゴーニュ産AOC赤ワイン   
生産者 Marcel Lapierre (Beaujolais)
Vintage 2001
テーマ 水平テイスティング
ワイン Beaujolais
Côte de Brouilly
Beaujolais Villages
Moulin à Vent
Morgon
 
<ボジョレー>
 抜栓後すぐINAOグラスへ。温度は低めの15℃。ピンクのような明るいルビー色で、エッジは透明。草っぽい印象のアロマがおとなし目に漂い、砂糖のない新鮮なイチゴのイメージである。口に含めば、チャーミング。酸味と渋みのバランスがコンパクトであるが、なにも考えずにおいしいと呟くだけでその場も和むというものだ。こういうワインが食卓にあるだけで、私は幸せになれたりする。


<コート・ド・ブルイイ>
 抜栓後すぐINAOグラスへ。液温14℃。色合いはボジョレーとほぼ同じ。香りの基調は一緒だが、ややこもった感じが印象に残る。口に含めば、葉や茎を意識して、ややばらけ気味になっており、少し温度を上げる必要もありそうだ。ガメイの嫌な所が前面に出てしまっているので、次回はもう少し高めの温度からスタートさせたい。温度が上がれば、ボジョレとの共通項が多くあり、それに比べて力強さを備えているのは、クリュボジョレーの所以だろう。ちなみにこのワインは秋刀魚の炊き込みご飯と合わせると笑っちゃうほどおいしくなるので、来年の初秋に再度試したかったりする。


<ボジョレー・ヴィラージュ>
 抜栓後すぐINAOグラスへ。液温15℃。やや黒みがかった色合いでるが、ほぼ同系色といって差し支えないだろう。このワインは何度も試飲しているが、ほぼ毎回期待通りの味わいを提供してくれるので、定番ボジョレの称号を送りたいくらいだ。砂糖シロップにさらりとつけて葉っぱごと頬張ったイチゴの味わいは、極上ボジョレのイメージ通りの味わいでもある。甘み成分を感じるので、前二作に比べがつんとグレードアップしたような喜びがある。

 このワインはボジョレのクリュを名乗れないものの、ボジョレで最も濃くって強い長熟タイプといわれるモルゴンの近郊の畑から収穫されたぶどうを使用しており、かつてはシャトー・カンボンの名でリリースされていたものだ。ラピエール氏による買収後は、エチケットも他のワインと同じ仕様にして、統一感を出している。本来ならばクリュ・ボジョレたるコート・ド・ブルイイの前に試飲すべきではあるが、過去の経験とシャトーカンボンの功績を重視して、この順番とした(正解だった)。


<ムーラン・ナヴァン>
 抜栓後すぐINAOグラスへ。液温17℃。色合いは同系。香りは閉じ気味だが、口に含んだときの印象が格段に良い。口の中での存在感が如実に違う。決して派手さはないけれど、しっかりとした果実味を華やかに表現してくる。甘み系のうまみ成分もほどほどにあり、飲み応えのあるボジョレである。ただ重箱の隅を突付かせてもらうなら、じっくり味わうほどに気持ち水っぽさが否めなくもないので、やはりあーだこーだ言う前においしくいただいてしまった方が勝ちだろう。


<モルゴン>
 抜栓後すぐINAOグラスへ。液温17℃。色合いもほぼ同系。これは前4作との間に一本線を引きたくなるような味わいだ。イチゴの果実味に土壌香が力強く加わり、かなりのインパクトがある。口に含めば、重さを感じる。重い。濃縮された果実味とバランスの良い酸とタンニンが、さすがラピエールの看板ワインを意識させる。ボジョレで最も長熟タイプといわれるモルゴンにあってその先頭を突き進むような充実感が心地よい。ガメイ特有の草っぽい味わいがなく、ピノ・ノワールにも共通しうる甘みがうれしくなってくる。おそらくはガメイの最高峰に位置するワインだろう。個人的にはこの重みを感じる味わいよりも、華やか系のボジョレ・ビラージュの方が好みだったりするが・・・。


左ボジョレ 右コート・ド・ブルイイ 左からヴィラージュ・ムーランナヴァン・モルゴン

<まとめ>
 マーセル・ラピエール作の2001年ボジョレ5本はいずれもすばらしい。一般的なボジョレよりも高めの価格設定は、味の裏づけがあり、逆に安いと思わせる実力が、にくい。値段的には後半になるにつれ高くなるが、ある意味値段どおりの味わいでもあり、一本目のボジョレと最後のモルゴンにはかなりの違いが見られるものの、5本を順番に飲むならば、緩やかなカーブを上るような印象があり、まさに予算に合わせて選べばいいのだろう。しかも3,000円を握り締めていれば、どれでも一本は必ず買えるのだから消費者にはうれしい選択である。

 最近マーセル・ラピエールのボジョレ・シリーズはいたるところで見受けられるが、完全天然ワインゆえに保存状態如何によっては、まったく違う味わいになってしまうので、信頼のおけるショップ買わないと、本来のすばらしさが楽しめないので注意が必要だ。ボトルの裏面にはちゃんと14℃以下で保管してね(註)と明記してある。ちなみに今回のワインはすべてワックスシーリング。早飲みボジョレのイメージを払拭させる意図が感じられ、飲めば納得のコーティング方法だとわかる。

註 原文 = Ce vin doit être stocké à une température inférieure à 14 ℃


以上



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