ドニ・モルテ | |||||||||||||||||||||||
試飲日 2002年11月25日 | |||||||||||||||||||||||
<ブルゴーニュ アリゴテ 2000>
少し冷やして抜栓後すぐINAOグラスへ。少し冷たさを感じるベスト温度。緑含みの透明感のある金色。少し埃っぽい香りが去った後は、柑橘系のアロマがバニリンオークに混ざって充満し、マロンフレーバーを遠い彼方に感じなくもない(感じたくなる)香りである。口に含めば、きりりとした酸味がアリゴテの特徴を十二分に表現しているものの、嫌味なすっぱさは無く、豊かな中にもすっきりした味わいが楽しめる。酸味の抜けがよく、短いながらもしっかりとした余韻が楽しめる。なかなかおいしいワインであり、思わず生ハムを切り分ける作業を忘れてしまう。 最近のアリゴテは2パターンあるように思われる。すっぱい従来型とトロピカリータイプ。ドニはその中間よりも従来型寄りに位置し、トロピカルな味わいは無いものの、すっぱみ系のなめらかバージョンのような印象を受ける。そして、川上の生ハムとの相性もバッチシである。生ハムを柿に載せて食べると、メロンバージョンとは異なる喜びに満たされるが、そこへアリゴテを飲み込むと酸味が強調され、少し敬遠したくなる。柿とワインが反発してしまうからだろう。そこで、柿はとらずに生ハムだけと合わせると、アリゴテの柑橘系の味わいが柿やメロンの代役を買って出て、これがまたベストな酸味を醸し出してくる。柿ひとつあるかないかで、ここまで相性が変わるのもワインの面白さだろう。いよいよ唾も溢れ出し、食前酒の効果も期待させてくれる。うまい。ミネラルな味わいは食事の始まりにもってこいだ。 <ジュブレ・シャンベルタン 1997> 次にジュブレを室温のまま抜栓し、そのままINAOグラスへ。若干ガーネットが入り込んだ濃いルビー色はその色素を徐々に失いかけているようである。ドニ特有のチョコレート香に黒系果実がなめらかに漂っていて、紅茶系の程よい香りが熟成感を伝えてくる。口に含めば、複雑な味わいはとてもしなやかで、タニックな味わいを絹ごしのような丸みで包み込んでいる。余韻はそこそこ長く、うまみ成分もたっぷり載っている。 ジュブレには鴨鍋を合わせてみた。ここはトールダルジャンではないので鴨にナンバーリングはされていないが、野菜と油揚げの出汁が滲み出る鍋に鴨肉をしゃぶしゃぶの要領で色が変わるまでしゃぶしゃぶする。タレはつけずにあっさりとした味わいのまま舌の上に。脂がたっぷり載った鴨は、それだけでも十分おいしいが、ここへドニーのジュブレを一口すする。うわ。鴨肉に薄くソースを延ばしたような味わいになり、これ以上の組み合わせは考えつかんというほどのうまみ成分で口の中は一杯になる。 軽く湯通ししたとはいえ鴨の土臭さは鼻腔にとどまり、少し戸惑いを覚えつつも、そこへ土のイメージがたっぷりのドニが組み合わされる。土で見事に繋がるハーモニーだ。うますぎてとりあえず、うっとりしながら、このワインを1本丸々使って鴨用のソースを作らせたら、おそらくそれは、天空の世界の入り口まで辿り着かせてくれることだろう。この冬、一度は体験したいベストな組み合わせだ。うまい。うまい。そして感謝。 この人物は私ではありません。 以上 |