<ボーヌ　1級　クロ・デ・ヴィーニュ・フランシュ>
　室温のまま抜栓後すぐINAOグラスへ。ムラサキが若干入るかなり黒めのルビー色。黒系果実が荒っぽく香り、血的な要素も感じられる。口に含めば、ミネラリーだが荒々しい果実味が残念だ。正直まだワインになっていない味わいは、おそらくこのままの味わいで終わってしまうのかと思わざるを得ない寂しさを募らせる。皮をだいぶ漬け込んで相当擦りましたねと言いたくなるほど果実味がバラけていて、この村の特徴である「しなやかさ」とは無縁の味わいだ。酸味とタンニンのバランスも悪く、余韻も短い。なんだかちっとも褒めていないぞ。このボーヌはいわゆる濃くって強いタイプであり、そういう嗜好の人にはインパクトもあるかもしれない。しかし、いわゆる繊細なブルゴーニュとは一線を隔す味わいであり、品もなく何かぱっとしなかったりする。ただしうまみ成分が微かに感じられるので、そこが唯一の救いでもある。


　デカンタが手元になかったので、別のグラスに移し換えて簡易デカンタを試みるものの、荒々しさはこなれることはなく、徐々にその荒削りな味わいすら水っぽくなってしまうので、どうしたものだろうか。困ったものだ。

　
　気分を変えて、合鴨のしゃぶしゃぶ風鍋に合わせてみる。脂の乗った合鴨にこのボーヌは良きソースの役目を果たしいてる。荒々しい果実味に鴨がネギ背負う姿をダブらせる。なかなかいけている。ワイン単独では、寂しさも募りがちだが、鴨の力に添うように食中酒としての役割はきちりと果たしていたりする。ワインの持つ土臭さと鉄分を感じる血の要素が合鴨の肉筋に染み込んでいくのだ。この組み合わせもまた、ありかと思うこの頃だ。


　ヴァンサン・ジラルダンは初登場ながら、ブルゴーニュ魂の周辺ではあまりいい評判は聞こえてこない。今後追跡していいものやら少し迷うところである。また畑自体はボーヌを代表するクロ・デ・ムーシュの隣であり、これまた初登場のパーセルだったりもする。


以上