ブルゴーニュ大会 | |||||||||||||||||||||
試飲日 2000年12月17日 | |||||||||||||||||||||
<はじめに> 今回のレポートは特別企画です。ワインセミナーに通う8名の有志がワインを一本ずつ持ち寄って、ブルゴーニュワインについて大いに語り、大いに飲もうという企画。行きつけのワイン専門店からも差し入れを戴き、人数以上にワインが集まった。時は師走。時節柄忘年会とクリスマスパーティを兼ねて、眺めのいい某所に集合した。持ち込むワインのグレードはACブルゴーニュクラス。白が5本、赤が4本、おまけの貴腐ワインが1本の合計10本が一堂に会し、やはり昼から飲む酒はうまかった。 <ラインナップ> ポール・ペルノ ブルゴーニュ 白 1997 ポール・ガローデ ブルゴーニュ 白 1998 コント・ラフォン マコンヴィラージュ 白 1998 ルフレーブ ブルゴーニュ 白 1996 コシュ・デュリー ブルゴーニュ 白 1997 ルネ・ルクレール ブルゴーニュ 赤 1998 モーム ブルゴーニュ 赤 1998 ジャイエ・ジル ブルゴーニュ・オート・コート・ド・ボーヌ 赤 1995 ジャイエ・ジル ブルゴーニュ・オート・コート・ド・ニュイ 赤 1990 ユエ ヴーブレー・クロ・デュ・ブール 貴腐 1989 <コメント> Domaine Paul Pernot ポール・ペルノはピュリニー・モンラシェ村で偉大な白を造る名手である。このブルゴーニュもピュリニー・モンラッシェ村の特徴を持っている。ハニー香と燻した煙っぽさが心地よい。温度が高くなるにつれ、ふくよかさがプラスされた。豊かなワインである。 Domaine Paul Garaudet ポール・ガローデはかのコント・ラフォンの元醸造長である。世界を極めた男が、自らのドメーヌでその実力を発揮している。ACムルソーはジョルジュ・ガローデ名で生産している。ムルソー村を拠点とするだけに、このブルゴーニュもムルソーらしさを具えている。バター香を含み、ポール・ペルノよりすっきりした味わいである。おいしい。 Domaine des Comtes Lafon ドミニク・ラフォンがマコンを造り出したという話が、日本でも囁かれているが、これがそのワイン。1998年が初ビンテージ。エチケットが間に合わず、どこかのラベルが貼ってあり、言われなければラフォンとは気がつかない。1999年よりあのエチケットでリリースされるらしいが、その時にはもう入手困難だろう。値も張りそうだ。幸運にもめぐり合えたことに感謝である。ちなみにラフォンを証明するかのように、ポール・ガローデのコルクと同一の紋章が刻印されている。味はマコンそのもの。柑橘系の味わいは飲みやすく、いい感じである。ただ、いかにも通好みの、飲み手を選ぶコント・ラフォン節は感じられなかった。でも大変おいしいワインである。 Domaine Leflaive 世界一のモンラシェを造るドメーヌである。そのブルゴーニュも恐ろしくうまかった。燻し香とバニラ香が豊かさを強調し、このクラスとは思えないほどのとろみも、たまらなくうれしい。時間が経ってもへたることのない力強さには脱帽である。すばらしい。このワインを見かけることも少ない。ルフレーブの銘醸は新宿西口の某店にあるが、このACブルゴーニュはめったに置いていない。今後見つけたら全て買い占めよう。 Domaine COCHE DURY 世界一のコルトン・シャルルマーニュを造るドメーヌである。ちなみに今回のワインの中では最も高価である。木の香があり、シャープな味わいがある。味も充実感が、とてもおいしい。キレがあり、しかも豊かな飲み応え。さすがコシュ・デュリーである。再び脱帽である。ルフレーブが花が咲く瞬間の、内側からはじけるパワーを持つのに比べ、コシュ・デュリーは満開の花びらが余計なものを殺ぎ落とした味わい。対照的な感触であるが、両者とも甲乙つけがたい。すばらしい。 Domaine Rene LECLERC 野人フィリップ・ルクレールの弟。目立つ兄に比べこの造り手は地味である。ジュブレ・シャンベルタンを拠点としている。一度噴いた形跡があり、飲む前から心配を誘ったが、意外(?)にうまかった。甘味のある黒系果実味は好きな味である。偉大な白の造り手を引きずることなく、スパッと赤ワインに切り替えられた。吟奏の会推薦の逸品。 Domaine Maume モームもジュブレ・シャンベルタンの造り手である。特級シャルム・シャンベルタンを筆頭に、割安でおいしいワインをリリースしている。赤系果実味のやさしい味わい。ルクレールで感じた甘味はなく、喉越しも柔らかである。しかし余韻はルネよりも長く、トータルバランスがよい。濃い赤の後でも十分楽しめる。おいしい。白の直後ではそのやさしさゆえ、少し厳しかったかもしれない。白を払拭できないかもしれない。この順番で正解。 Domaine Jayer-Gilles ブルゴーニュの場所指定ワイン。1995のオート・コート・ド・ボーヌはタンニンがしっかりあり、甘い黒系果実味がうれしい。湿った土壌香とコーヒー飴を連想させる香はジャイエ・ジル節の典型である。飲み応え十分。さすがこのアペラシオンでトップを張るドメーヌである。アンリ・ジャイエの従兄弟として有名。 オート・コート・ド・ニュイ1990は今回のテースティングのラストを飾るのにふさわしいワイン。焦がしたカラメル香があり、果実味凝縮感のある喉越し。うまみ成分もしっかりしている。大変おいしいワイン。このクラスでこの濃さは悦びであり、このブルゴーニュ大会の成功を約束してくれた。感謝である。 Domaine Gaston Huet この貴腐は世界四大貴腐ワインとして評価される日も近いだろう。シュナン・ブラン種から造られ、このユエは有機栽培の第一人者としても有名である。酸味のある甘口は単に甘いだけのワインにはない上品さと飲みやすさがある。最高のデザートでもある。このワインがサービスされれば、食事の終りが近づいたことを知らせてくれるし、なによりこのシャープな甘さは至福である。 <まとめ> ワインセミナーでの成果が発揮できたラインナップである。コント・ラフォン以外は、すべてACブルゴーニュである(貴腐のユエも除く)。 ただしコント・ラフォンのマコンも実質的には同ランクなので全てといっても差し支えないと思われる。このワインをみて、どう思われるだろうか。私は飲む順番も含めて完璧だと思う。特に白はブルゴーニュのトップ4のうち3つが並び、ジャイエ・ジルも堂々と酉を飾っていた。 今回のワインは白はシャルドネ、赤はピノノワールから造られる。同じ葡萄品種であり、ブルゴーニュという限られた場所で造られたワインである。しかし、その味わいは驚くほど違っていた。生産者の特徴がワインに現れ、本拠地の個性も感じられた。偉大な造り手は、そっぽを見られがちなワインにも力を抜かない。本当に偉大なACブルゴーニュを造っている。 各自が持ち寄ってのワイン会は焦点が定まりにくく、ワインの優劣があると後ろめたさも募ってしまう。今回のブルゴーニュはランク的には同じである。造り手により相当の価格差はあるが、ブルゴーニュの地方名ワインである。自分の持ってきたワインに引け目を感じることはない。堂々と、そしておいしくいただけるのだ。 普段は低く見られがちなワインであるが、ワインを知るものには最高のワインであると信じてやまない。そしてその思いが正しいことを今回の企画が証明してくれた。参加者全員がそのすばらしさを享受していて、余計な説明は要らなかった。上記の生産者は世界を代表するワインを造る。希少であり、高値であり、そして何よりも人々を魅了する。それはトップワインの評価でもあるが、同時に普通のワインの評価でもある。 <おまけ> 今回の特集を体験して感じることがある。それはこのクラスの販売本数の少なさである。ネゴシアンの同ランクはいたるところにあるが、偉大な造り手のワインは皆無に近い。偉大な造り手の看板ワインはお金を払えばたやすく手に入るが、このクラスは探さないと巡り会えない。この企画のために都内のワイン売り場を歩いてみて、ふと、そう感じた。 今回のブルゴーニュ特集に関し、参加者全員に感謝いたします。 以上 |