ドメーヌ・ゴビー
試飲日 2003年01月13日
場 所    神奈川県某所k
照 明 蛍光灯
種 類 フランス ラングドック・ルーション地方AOC赤ワイン
生産者 Domaine GAUBY (Côtes de Roussillon)
Vintage 2000
テーマ 話題の造り手
ワイン Côtes du Roussillon-Villages La Muntada

<ムンタダ (コート・デュ・ルーション・ビラージュ)>
 暖房の効いた部屋にて、抜栓後すぐINAOへ。ムラサキをベースにした濃い目の色合いは澄んでいて、非常に好印象だ。香りはスミレやベリー系の果実味が豊か。口に含めば、繊細な味わいを基調とし、丸みを帯びたタンニンがそれを下支えしている。華やかな濃縮感も心地よい。そして甘くないうまみ成分もしっかりと存在し、つくづく上品で繊細な味わいを醸しだしている。華やかさを伴ったチャーミングな味わいは、荒々しくなりがちなこの地にあって、意外性もあり、なるほどスーパーラングドック・ルーションの評判通りの味わいだったりもする。葡萄品種はシラーの割合が多い(註1)と聞くが、シラー特有のスパイシーな重さはなく、派手なヘビー級のインパクトはない。それらに代わってエレガントなうまみ成分が若干軽めに演出されていて、飲むごとに上品な味わいが楽しくなる。まさに各地の銘醸級に匹敵しうる味わいだ。低く見られがちなこの地にあって、その印象を払拭するに余りある実力に、ワインの奥深さを知るところだ。

 グラスに満たされたムンタダを飲み終えて思うことがある。ハッピー。そう、このワインは飲み手を幸せにする力がある。薔薇色のワインとでも表現したくなるほど華やかで美しい。歯茎を刺激するタンニンがないため、というよりは、それもあるだろうが、このしなやかさが心に優しく語り掛けてくれるからだろう。満足のハッピーワインである。

 しかし、しいて言うなれば、うまみは十分あるものの、コクが若干足りなくもない。これは葡萄の平均樹齢が20年という若木であることと関係が深いかもしれない。それにしても若木にしてこの滑らかな味わいは、少し驚異的だ。ただし日本国内某所では2万円の高値がつくらしいが、残念ながらその価格ほどには感動はなく、珍しいワインの域ゆえの高値であると認識せざるを得なかったりもする。ちなみに今回のワインはパリで某氏によって購入されたもの。パリでは、味わいと均衡が取れた価格で販売されており、珍しいという割には意外に在庫は多いようだった。


 ドメーヌ・ゴビィはフランスの評価本Le Classement 2003においてルーション地区で唯一☆☆を獲得し、各種品評会でもボルドーの銘醸級を凌駕する評価を得ているという。日本でも某誌をはじめ各誌で紹介されている。そのためにネット市場でも絢爛豪華に紹介され、人気沸騰中である。除草剤などの化学物質を使わない農法は、テロワールを尊重し、大地の恵みをそのまま伝えてくれている。一部メディアではムンタダはビオディナミを実践しているというが、フランスのビオディナミ専門誌には名前がなく、真相は分からない(註2)

 このムンタダはゴビィの看板ワインで、その収穫量は18hl/haというブルゴーニュのグランクリュの半分ほどの低収穫量という。商売を度外視した驚異的低収穫量だ。世界最高レベルのワイン足りうるには相当の努力が必要なのだと改めて頭が下がる思いである。

 今回の出会いに際し、某氏に感謝するとともに、騒がれる理由が分かる味わいに、とてもいい経験をさせてもらったという印象である。


註1 葡萄品種 シラー60%  ムールヴェードル25% カリニャンとグルナッシュが数パーセント
註2 参考資料 LES BONNES ADRESSES DU VIN BIO 2002-2003 
 

以上
 


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