国立醸造所(シュタインベルガー) | |||||||||||||||||||||||
試飲日 2003年01月26日 | |||||||||||||||||||||||
<シュタインベルガー アウスヴァイン 1992>
少し冷やして抜栓後すぐリーデルソムリエシリーズ400/1通称ラインガウグラスへ。非常に美しい薄い金色は、黄色といった方が近いかもしれない。グレープフルーツに砂糖をつけたようなリースリング特有の香りが繊細で、全身をグイッとひきつける魔力がある。口に含めば、とろとろの濃縮感にふくよかな味わいが重なったボリューム感溢れる逸品で、上品な甘さが印象的。甘味たっぷりにもかかわらず、酸に切れがあるので、甘口ワインにありがちなべっとり感もなく、非常に優雅な味わい。アルコール度数は8.5%だが、その濃縮な味わいゆえになかなか飲み込むことが出来ないほどだ。 口に留まるうちから唾があふれ出し、その量たるや口に含んだワインの10倍にもなろうかという凄まじさ。余韻もとびきり長く、いつまでも終わらない味わいに、喜びをはるかに超えた感動の世界が待っていてくれる。非常に濃い味わいにもかかわらず、すっきりとしたキレのいい味わいは不思議である。リースリングの酸がこの切れ味を演出してくれているのだろう。ワインを飲み込んで、余韻に浸りながら、このワインのことを考えていると、これまた大量の唾が溢れ出てくる。ワイン自体はとうになくなっているのに、思い出しただけで、なんなのだろうこの唾は、である。まさに今、パブロフの犬と唾液対決をしたならば、その犬に勝つ自信すら覚えるから不思議だ。ちっょと例えが下品かもしれない。 とにかくこのアイスヴァインは凄まじい。うまみ成分の塊を口に入れているような感覚は、滅多に味わえるものではない。凄すぎるワイン。さすがドイツワインの最高級のアイスヴァインの名に相応しい味わいである。そしてこの味わいこそが100年という長期の熟成にも耐えうる能力なのかと実感せずにはいられなかったりする。 今回のアイスヴァインはアイスヴァイン誕生の習わしに従って、1992年12月31日に収穫されたぶどうを醸造しているが、その量たるや僅かに180本という。伝統を重んじる正統的アイスヴァインは12月31日に収穫せねばならないため、10年に一度の割合でしか生産できないらしい。92年の次は97年に造られたというが、価格はすでに10万円の大台を超え、なかなか縁遠い存在になっている。そもそも92年も超プレミアムワインであり、なぜ飲めるのかまったくもって不思議であるが、再会することが100%あり得ないワインとの出会いもまた楽しからずやである。 ちなみに今回のワインも、石橋コレクションであり、クロスター・エーベルバッハ修道院のセラー蔵出しワイン。そして、資料によるとシュタインベルガーはドイツ宰相ビスマルクが愛したワインであり、時の権力者は凄いワインをこよなく愛するのだった(註)。これがまさにドイツワインの頂点に君臨するワインである。オークションで1959年産のシュタインベルガーのアイスヴァインを落札するには、100万円は必要というから驚きである。そしてこのワインより上に君臨するのはただひとつのワインしかない。トロッケンベーレンアウスレーゼである。ただそのワインに出会う確率はおそらく0に近いので、今回はここまでにしよう。 透明感溢れる美しい金色。 註 (時の権力者が愛したといわれている酒の一例) フランス ナポレオン = シャンベルタン イギリス ウイストン・チャーチル = ポール・ロジェのシャンパン アメリカ ジョージ・ワシントンが独立宣言のときに乾杯した酒 マディラ 以上 |