プリューレ・ロック | |||||||||||||||||||||||
試飲日 2003年02月08日 | |||||||||||||||||||||||
<ニュイ・サン・ジョルジュ 1級 クロデコルベ 単独所有>
マダムとデカンタするか相談しつつ、ホストテイスティングの結果、しないことにして、抜栓後すぐ大振りのブルゴーニュグラスへ。ガーネットを配するルビー色はつくづく薄色で、透明感のある鮮やかな色合いだ。薄い色は個人的に大歓迎。紅茶が品よく熟成感を提供し、乾きぎみの軽い腐葉土が折り重なり、そしてイチゴをメインにした赤系果実が複雑に香っている。蒸れているという感じもする。香りはかなりのハイインパクトだ。口に含めば、滑らかで、洗練された味わい。歯茎を刺激するタンニンはなく、それでいて丸みを帯びたタンニンが、滑らかな味わいを下支えしていることを意識させる。しっかりとした厚みを感じることが出来るのだ。タンニンよりも酸味が優先するきらいこそあるものの、昆布だし系の優しい味わいは、和の心に通ずる喜びでもある。薄口のうまくち。うまみ成分がなめらかで、時にニュイ・サン・ジョルジュらしい筋肉質の解け具合を感じさせるが、すでに熟成のピークを迎えた味わいは、うれしさで満たされている。 某氏をして、口に含んだときの角度と、余韻として出て行く角度があまりにも違うとの感想が聞こえた。なるほど、インパクトのある香りが、ぐさりと心に突き刺さり、味わうごとにそれが自分の中で吸収され、放物線を描くような余韻がいつまでも続く。 そして、ここからがこのワインの面白さであり、儚さを実感するのだが、このワインの寿命はわずか20分程度だった。抜栓から20分(推定)を過ぎたあたりから急速に、構造的な味わいが失われ、あらよという間に酸味がたち、水の如し滑らかな液体へと変化した。この急激な衰え感はびっくりであるが、これもまたワインのひとつの終わり方なのだろう。これは、冬場につき、おそらく暖められた空気がテーブルにダイレクトに当たり、ワインの温度が高めでキープされたことと、グラスが少し大きすぎたことが原因かもしれない。 ひとつの料理を楽しむためのワイン。その一皿に全力を傾けたがゆえに、そのお皿がなくなったところでほっと力を抜く様が面白い。この変化もまたブルゴーニュの醍醐味なのだ。今宵の出会いに感謝である。そしてブルゴーニュの1997の赤は、すっかり熟成感が楽しめるぞ。 以上 |