ルロワ | |||||||||||||||||||||||
試飲日 2003年02月22日 | |||||||||||||||||||||||
<ムルソー>
抜栓後INAOグラスへ。やや赤みを帯びた薄い金色で、一瞬、低温劣化の疑いがよぎるが、煮詰めたハニー香が静かに香り、品質的な問題はないように思われる。口に含めば、なんというか、あたかも綿菓子を頬張ったごとくの味わいで、口いっぱい広がる柑橘系の味わいは、瞬時に消えてなくなり、余韻もなく、なんだコレは状態に突入。やはり劣化か。それとも1998の宿命か・・・。しばし呆然の様相を呈してくる。やはり1998のムルソーはルロワをもってしても厳しいか。半ばあきらめかけて、それでもちょっと待ってみる。おお。んん。おお。んん。おおおおお。 驚いたことに、時間とともにムルソーちっくなふくよかさが目の前に現れるではないか。華やかさこそないものの、ずしりと重いヘビー級ムルソーの登場に、改めてルロワの底力を思い知る。とろみ感のある酒質に、きりりとしまった酸もあり、なぜかくも変貌を遂げるのかまったく不思議な思いで一杯だ。時間にして20分も経っていない筈だ。なぜこうも違う。ラストはグレープ・フルーツを思わせる香り立ちが心地よく、余韻も復活しているから、私の頭も混乱からさめやらない。 なんでだろう。抜栓直後のあの綿菓子が口の中で解けていく感覚が消えないうちに、時間とともにガツンとムルソー。とても同じボトルから注いだワインとは思えない変身ぶりに、ただただ口をあんぐりあけて見守るしかなかったりする。恐るべしルロワである。 今回のワインはネゴシアンのワインであり、1998という天候に恵まれなかったムルソーをルロワの指導力で見事に成功を収めている。ムルソーにもかかわらず、ラストに早飲みタイプの象徴的な味わいであるグレープ・フルーツが出てしまうところにこの年の天候を彷彿とさせるが、ルロワ帝国のワインに対するたぐい稀な愛を感じ、ネゴシアン部門といえど品質を軽視しない姿勢に頭も下がる思いである。 1998というビンテージを知る上で、貴重な一本である。感謝。 以上 |