ミッシェル・ラファルジュ | |||||||||||||||||||||||
試飲日 2003年04月02日 | |||||||||||||||||||||||
<ヴォルネイ・クロ・デ・シェーヌ> 抜栓後すぐINAOグラスへ。エッジに若干熟成色が見られる濃い目のルビー色。黒系果実が微かに感じられるが、木のニュアンスが強く、ブジョネの疑惑が一瞬よぎる。口に含めば、酸味が優先し、遅れてやってくるタンニンが歯茎を乾かし、バランスが悪い。こなれていない雑味感もあり、奥行き感は乏しく、全体的に平べったい印象は拭えないだろう。例えを悪くするならば、水で薄めた牛乳のような違和感すら感じる。エキス分と水分が隔離されたようなバランスの悪さなのだ。むむむ、である。 おそらくワインに長けた人が、このワインは劣化ですと明言した途端に、このワインを飲む人すべてが、劣化を意識するであろう味わい。しかし、このワインは劣化の範疇には入らず、まだまだこなれていないだけの閉じた状態ですと言葉を改めれば、んんん、なるほど、この味わいはぎりぎりの線でOKなのかと思う味わいだ。 微妙なのである。劣化か健全か。飲んで飲めないこともないが、ここに感動はない。この味わいは極めて主観的な判断であり、ワインの先導役の判断によっては、どちらともとれる味わいだ。ワインの味わいは誘導される。結論を少し待ってみた。 抜栓後9時間経った後、再びグラスにワインを注ぐ。ん。木のニュアンスが和らぎ、野性的な黒系果実のニュアンスが顔を出している。口に含めば、先ほどまでの違和感はなく、たしかにこのワインで感動しろというには無理があるものの、不快感なく飲み干すことができる味わいになっている。全体的に丸みを帯びた印象に、果実味がプラスされ、余韻もそこそこ存在する。そしてこのワインは劣化の範疇に入っていないと断言できる。それが証拠に全部飲み干してしまったのだから・・・。ただし、さすがに抜栓してから9時間も待てないので、このワインは今飲むならば、デカンタをしてしばらく待ってからサービスしたほうが、よいかと思う。 また今回のワインのロット違いや経路違いを確認できれば、その味わいの差をより鮮明なものに出来ると思われるが、何よりブルゴーニュは数も少なく、それは出来ない相談だったりもする。こうした貴重な経験を積むこともまたワインの楽しみとすれば、肩の荷も下ろして楽しく飲めることだろう。ワインは難しいが、ワインは楽しい。せっかくのワインは減点法ではなく、プラス思考で楽しみたいものである。このワインが6000円を超える価格で取引されているならば、ほかにワインを探したほうがいいが、3000円台で入手できるとしたら、ワインのひとつのあり方を問うワインとして、一度飲んでみるのも無駄ではないと思うこの頃だったりもする。 このワインを飲んで、当主のミッシェル・ラファルジュ氏の厳しいながらもワインを愛する瞳を思い出す。またクロ・デ・シェーヌの畑は、モンテリーへと通ずる片側一斜線のアスファルトで舗装された道に接しているが、この道は高速サーキットよろしく、ガンガン車を飛ばす追い越しポイントでもあり、自転車をこいだり、歩いたりする人には、意外と怖い道だったりもする。そんな風景が頭をよぎり、ワインの味に重ねたかったりもする。 以上 |