フィリップ・パカレ | |||||||||||||||||||||||
試飲日 2003年06月05日 | |||||||||||||||||||||||
<ジュブレ・シャンベルタン> 抜栓後すぐリーデル・ヴィノムシリーズ・ブルゴーニュグラスへ。薄く、桜色と表現したくなるほどの色合いはパカレ色と命名したくなるほど美しい。そして個人的にカブトムシ香と呼んでいる注いだ直後のこの還元臭は、ビオ系ワインの大きな特徴であり、パカレのこのワインにもゆったりと漂っている。おが屑に堆肥香が重なったような独特の香りは好き嫌いを分けるが、程なくして消えていくので、苦手な人はしばらく待つべしである。ビオ香が消えると、赤系果実が気持ち土壌香に混ざり合い、品よく香っている。口に含めば、薄い味わい。一瞬エキス分をまったく感じず、色のついた水を飲むが如しの錯覚に陥るが、そんな心配をよそに、ワンテンポ遅れてじわりとうまみ成分が浮き上がってくる。どこかに隠れていたかのような果実味がゆっくり現れ、滑らかなタンニンが下支えする上品な味わい。この赤系ベースで、癒し系と表現したくなるエレガントな味わいは、卓越した醸造技術と首尾一貫した哲学のなせる業であろう。 このワインは時間を追うごとにそのモチベーションをあげてくる。抜栓して3時間以上経過してもなおジュブレらしい男性的な味わいをかもし出すところが、驚異でもあり、ただただこの美味しさに身を任せたりする。グイグイうまい。このワインをゆったり味わえば、赤系の果実をジャムにしてその粒々を奥歯でかみ締めたようなエキス分を感じることが出来る。うまみ成分の塊を全身で感じ取り、偉大な大地の恵みにしばし言葉を失うこと必死である。すごいかもしれない、である。 パカレ恐るべし。この薄い色合いと、癒されるうまみ成分は、ブルゴーニュの新しい息吹であるとともに、これぞ官能主義の到達点でもあるような気がしてくるからうれしい。ただお酒として飲み込んでしまえば、するりと滑らかな水の如しワインであるが、このワインの一つ一つのエキスをじっくり時間をかけて味わえば、ブルゴーニュ魂に触れることになるだろう。 以上 |