フィリップ・シャルロパン
試飲日 2003年6月24日
場 所    ジュブレ・シャンベルタン某所
照 明 自然光
種 類 フランス ブルゴーニュ産AOCワイン
生産者 Philippe Charlopin (Gevrey-Chambertin)
Vintage 1999
テーマ
ワイン CHAMBERTIN Grand cru
 
<シャンベルタン>
 シャルロパンの娘さんが経営するBARにて。抜栓後すぐ店指定グラスへ(仕様等不明)。やや濃い目の美しいルビー色。エッジにムラサキ感はないが、かなりの濃縮された色合いである。香りは妖艶で、カシスなどの黒系果実にフランボワーズの赤系が品よく混ざり合い、複雑なアロマを放っている。イチヂクも相当感じられ半生から干した感じへと徐々に変化する様は鳥肌ものである。土のニュアンスと動物的な雰囲気も醸し出しつつ、丸みを帯びたタンニンと強いアルコール感、心地よい酸味が全身を刺激し、官能的な階段を登らせる凄みがある。何も尖ったところがなく、かといって足りないものもない。極上のピノ・ノワールだけが達成しうる球体に近い滑らかな味わいは、あたかも水のごとくの印象を受けるが、実は相当な奥深さを持ち、エレガントで複雑で、そしてフィネスに満ちている。ミネラル分をしっかりともつ味わいに、ジビエ料理を合わせたくもなる。するりと飲み込んだ後に押し戻ってくるバックテーストに身を任せ、我を忘れることしばし。当然のごとく余韻は長く、永遠に終わらないかの錯覚にすら陥る。この完璧なワインを味わえる喜びに浸りつつ、ふと横を見れば、このワインを造った本人が横でニコニコしている様は、ちょっと絶品の域を超えたりするのだった。

 よくシャンベルタンは男性的なワインの筆頭格として例えられるが、完璧な味わいを達成する造り手のそれは、最高のバランス感覚に満ち、荒々しくなく、筋肉質でもなく、男性的から受ける印象とは異にするようである。品と訳されるフィネスを大いに感じ、健康的で理想的な体躯を持ち、知的で向上心と好奇心に満ち溢れた人間像に重ねることが出来るかもしれない。悟りの境地または理想的な完璧さ。ジュブレ・シャンベルタンに9つある特級畑のなかでもル・シャンベルタンのみが達成しうる境地につくづく脱帽の思いである。

 
以上



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