ジャイエ・ジル | ||||||||||||||||||||||
試飲日 2003年06月20日 | ||||||||||||||||||||||
<1997 ニュイ・サン・ジョルジュ 1級 オーポワレ> ボーヌのレンタルサイクルの店主お勧めのレストランにて(屋外)。抜栓後すぐ、この店の配慮で通常に使用するグラスよりも大きめのグランヴァン用グラスへ。熟成感を感じるガーネットを帯びたルビー色。香りのインパクトは強く、干しイチヂクのニュアンスをベースに、熟し気味の黒系果実とコーヒー香、バニラ、湿りがちな土壌香などが上品かつ複雑に漂ってくる。口に含めば甘酸っぱい絶妙なタッチで、十二分にこなれたタンニンと楕円を思わせるふくよかなふくらみ具合が思わず舌鼓を打たせてくる。そして、この忘れがたいうまみ成分が泣けるほどに目元を緩ませてくるから幸せである。余韻は長く、ほっと溜息をしつつも、このブーケを外に出したくない欲求に駆られたりする。時間とともに複雑な香りはますます甘みを帯びてきて、この変化も絶妙だ。味わいそのものは上品でシックな味わいを心もち上昇気味にキープし、そして最後の最後になってゆっくりと頭を下げるようにさがっていく様に、言いようのない切なさを感じるのだった。とにもかくにも極うまである。 今回は昼間にムルソーの教会付近ですれ違い、夜にボーヌで再会した某女史らグループとの楽しく、ちょっとリッチな夕べの最後を飾るワインとして登場したが、彼女らのグラスから溢れ出るブーケを抱きしめつつ、いつまでもその余韻を楽しむ姿に共感したりする。そう。このワインは飲み続けたいのに、飲んだ分だけ確実に減ってしまう甘く切ないワインだったのだ。そしてジャイエ・ジル独特のコーヒー香が、干しイチヂク香の陰に隠れるとき、ピノ・ノワールの甘酸っぱい旅の思い出が心に刻まれるのだった・・・。 今回のジャイエ・ジルの1997のように優れた造り手のブルゴーニュの赤は今がまさに飲み頃で、この味わいはしばらく続くものと思われ、そのビンテージ評価は確実に押しあがっていることを付記しつつ、今でもあの甘酸っぱさが思い出されるこの頃だったりする。 以上 |