モーリス・エカール
試飲日 2001年1月28日
場 所    神奈川県内某所     
照 明 蛍光灯
種 類 フランス AOCワイン
生産者 Maurice ECARD et Fils (Savigny-Les-Beaune)
Vintage 1998
テーマ サビニー・レ・ボーヌの名門
ワイン Savigny-Les-Beaune 1er Cru Les Serpentieres
 

<味の印象>
 赤系を基調としたルビー色に若干茶色が染み込んだような落ち着きのある色合い。甘味のある果実の香が鼻空をくすぐり、香と同じ味がする。鼻と舌が同じ味を共有している。いわゆる素直な感じがするワインである。軽やかな印象を受けるが、どっこいしっかりとした重みもある。微妙なバランスがきれいにまとまっている。しかし時間が経つにつれ、甘味が後退して血を含んだ鉄系の味がしてきた。この系統は苦手であり、グラスも今ひとつ進まなくなった。俗にこの村のワインは「香り高くうつろいやすい」と評されるが、なるほど油断していると味わいが変ってしまう。口に含むとややシギシギした刺激を感じる。しばらくこのままにしておこう。よそ見をしたり雑談したりして更に時間が進むと、INAOグラスは再び甘い香に満たされてきた。この瞬間が飲み頃か。ゴク。んんん。やっぱりうまいな。このうつろい易さにはがっかりしそうになったが、さすがピノ・ノワールの微妙な味わいだ。最終的においしくいただくことができて満足である。
 ただ、このワインは正直、地味な味わいである。サビニー・レ・ボーヌという地味なACの宿命でもあるが(ボーヌの傍らという意味からして地味である)、ある程度ピノ・ノワールを飲み込んできた人に愛され得るワインかもしれない。コート・ド・ニュイの村名クラスと比べても、もの足りなさを感じざるを得ないし、他のコート・ド・ボーヌの同ランクと比べても力強さや際立つ個性に欠ける節がある。しかし、ピノ・ノワールの個性はしっかりと受け止めているので、食事時にふとこのワインが置かれていたら、さぞかし嬉しいことだろう。ワインがでしゃばらず、それでいてしっかりとした味わいは伝えてくる。
 自分から購入するには、やや踏ん切りにかけるが、テーブルに置かれていたら嬉しくなるワインとも言える。ちょっと図々しいかな。
 ちなみにセルパンティエールという畑の意味は二節ある。ブドウ畑に蛇が出るという説と(セルパン=蛇)、所有者が複数いてその地境が蛇のようにくねくねしているからという説がある。ナルバントンと並んでこの村の代表的な畑である。


<モーリス・エカール>
 サビニー・レ・ボーヌを代表する造り手の一人で、シモン・ビーズやブリュノ・クレールと並び賞される造り手である。畑はすべてこの村にあり、造りだすワインはこの村の評価を上げるのに一役も二役も買っている。以前この村の水平テイスティングを経験したことがあるが、畑ごとに個性を出す実力に、ワインの面白さをしんそこ堪能させてくれた。また、このドメーヌはピノ・ブランだけから造る白ワインもある。珍しさも手伝って、その味わいは一度は飲む価値はある。

 今回のワインはノースバークレー社用のキュベでノンフィルターである。


<おまけ>
 サビニー・レ・ボーヌを語る時、どうしても避けて通れない人物がいる。マダム・ラルー・ビーズ・ルロワその人である。彼女の造るナルバントン1997は、溢れんばかりの果実味と品のいい甘さに満たされている。途方もなくおいしく、残念ながらこの村の代表格たるモーリス・エカールすら影をうすくする。ドメーヌ・ルロワの主要株主たる某高島屋にて極稀に扱われているが、その価格はエカールの3倍はする。確かにその価格差はやむを得ないとするところではある。今度某店に入荷するらしいので、やっぱり買っちゃうだろうな。高いけど、うまいぞ。

以上


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