アンリ・ジャイエ | |||||||||||||||||||||||
試飲日 2003年11月29日 | |||||||||||||||||||||||
<ブルゴーニュ・パストゥーグラン> 抜栓後30分位経過後にINAOグラスへ。エッジに透明を意識させつつもガーネットを伴う奥深い色合い。動物香がかなり強烈で、この香りは2003年11月9日午前10時ごろにパリ市内バスティーユの朝市のジビエ売り場で青首の前で嗅いだ香りと同じニュアンスだ。加えて、シガーや紅茶、そしてイチゴ系の果実香が陰に隠れながらも感じられ、黒系果実の趣も残しているような微妙なタッチである。口に含めば、コルトン系のなまめかしい味わいで、かなりの鉄分を含んでいるような印象を受ける。構造的には、奥深さはなく、やや平板ではあるものの、決して劣化の範疇にはなく、ミネラル感もあり、まだまだ健在の味わいである。ただし時間と共に酸味が前面に出てくるために、この味わいはジビエ香もあいまって、かなり好みを分けそうな気配ではある。余韻は短くもなく、そうかといって長くはないが、薄れゆくうまみ成分にしばらくの間身を委ねる様は、悪くない心境だ。おそらくはこのワインが熟成によって味わい的な上昇をすることはないだろうが、下降の一途を辿る(正確には下降の途中だ)ワインの運命に立ち会うのも、ワイン好きならではである。 1993年という10年前のパストゥーグランとは思えない健全さが、いかにもジャイエを意識させ、少しばかり神の手が見えたような、見えなかったような感覚もまた楽しからずや。このワインのガメイとピノ・ノワールの比率は不明だが、セパージュ比率云々よりも、人類の残した貴重なワインとして大切にその最後を見守りたいと思わせる逸品だ。 もう、おそらくは出会うことのないワインだけれども、思わぬ拍子に出会えた奇跡に感謝して止まない夜を過ごそうと思ったりする晩秋の湘南界隈なのである。 以上 |