アルマン・ルソー
試飲日 2004年01月10日
場 所    神奈川県某所     
照 明 蛍光灯
種 類 フランス ブルゴーニュ地方AOC赤ワイン
生産者 Domaine Armand ROUSSEAU (Gevrey-Chambertin)
Vintage 1976
テーマ ルソーのシャンベルタンの古酒
ワイン CHAMBERTIN Grand cru

<特級シャンベルタン>
 
抜栓後すぐINAOグラスへ。とても美しいガーネット色。エッジの透明感はかなり幅広で、28年の歳月の重みをじわりと感じさせてくれている。香りはハイ・インパクトで、ガツンと鼻腔を直撃するふくよかなブーケにちょっとメロメロである。妖艶で温かみのある香り立ちは、なめし皮、台湾茶、枯葉、たばこ、などが複雑で、言葉に置き換えることを躊躇わせるほど奥深い。そして驚いたことに赤系果実のニュアンスもまだまだ健在で、いかにも上品にかつ優雅に香っているのだから鳥肌も立つというものだ。そしてこれはある意味、空想の世界だが、葡萄の樹液を想像させる母なる樹木の面影すら感じさせるところが凄い。口に含めば、活き活きとしたアグレッシブさを感じつつ、ロマンスグレーの古き良きうまみ成分がたっぷり乗っていて、丸く、真綿系のしなやかな味わいである。そして後述する一瞬の空白を置いて、じわりとうまみに身を委ねる様は、古酒特有の言いようのない「至福」なのである。余韻はMAX的に長く、いつまでも終わらないから至福の時はそう簡単には終わらないでいてくれる。

 ルソーのシャンベルタン1976には不思議な味わいがある。口に含んだ瞬間は、古酒とは思えないほど若々しく、うまみ成分たっぷりの味わいを楽しむことが出来、そして一瞬の間をおいて、ワインを飲み込む直前に再びうまみ成分が戻ってくるようなニュアンスが面白い。なぜか一瞬だけ味わいに空白の時間が生まれるのだ。この空白はなんなのだろう。この空白感こそが、世紀のビンテージ1978に、その名声を一歩譲る所以だろうか。謎は解明されそうにはないが、この一瞬立ち消えになる味わいは、大変興味深く、知的で、好奇心をくすぐってくれるから楽しい。

 いずれにしても、もう再会することはない1976年のルソーのシャンベルタンではあるが、今宵出会えた幸運を噛み締めつつ、優美な夜は更けていくのであった。ピノ・ノワールは若い時もおいしいが、古酒になっても違ったおいしさを醸しだしてくれるから、もうメロメロなのである。これぞ、ブルゴーニュ魂。


以上
 


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