メオ・カミュゼ
試飲日 2001年2月6・11日
場 所    都内・神奈川県内某所
照 明 白熱灯・蛍光灯
種 類 フランス AOCワイン
生産者 Domaine Meo-Camuzet (Vosne-Romanne)
Vintage 1996・1998
テーマ メオ・カミュゼ登場
ワイン 1996 Nuits St Georges 1er Cru Aux Murgers
1998 ECHEZEAUX Les Rouges du Bas
 
   

<ニュイ・サン・ジョルジュ・オー・ミュルジェ>
 デカンタ20分。黒系の深い色合い。この村を特徴付ける土壌香がある。それはあたかも降りはじめた雨が乾いた土を湿らせる時の香りに似ている。そういえばあの時、中学の校庭で運動会か何かの練習をしていた時、突然の雨に戸惑いながら、埃まみれのジャージとグランドがすうっと湿っていくあの臭い。懐かしい。最近はコンクリートとアスファルトの道しか歩いていない。今度山でも登ってみるか。ふとそんな思いをいだかせる香である。味わいはしっかりと辛口に仕上がっていて、濃縮な果実味と渋みが口の中に広がる。ほのかに甘さを感じる味わいは、この味が北米市場で支持される理由を分からせてくれる。ただ余韻は短い。うまみ成分が立ち込めるようなアフターテイストはない。お金があれば、ごくごく飲んでうまいワイン。食事とともに飲めば、極上のソースとの相性はばっちりだろう。ただワイン単独で飲むと、余韻の短さになにかもの足りなさを感じざるを得ない。

 俗に1万円超のニュイ・サン・ジョルジュはスーパー・ニュイ・サン・ジョルジュとして別格の扱いを受けている。特級のないこのAOCにおいて、そんなワインは価格相応の価値がある。今回のワインもその名に恥じない堂々とした味わいを持っている。ファーストインプレッションに重きを置くか、うまみ成分に価値を見出すかによって、このワインの評価も分かれるだろう。個人的にはうまみ成分の虜にはまっているので、このオー・ミルジェは飲みたいワインだが、買いたいワインではなさそうである。もちろんお金があればの話ではあるが・・・。
 ちなみにこのオー・ミュルジェは1981年という20世紀を代表する不作年にして、とんでもないワインを造りだした男に、「神の手」を与えた畑としても有名である。その人の名は、アンリ・ジャイエ。ブルゴーニュを語る上で最も偉大な造り手のひとりである。
 2001年2月6日。都内某所にて。


<エシェゾー(畑指定)>
 デカンタ15分。濃い紫色を基調とした黒系のルビー色。この村は薄い色合いが特徴のアペラシオンであるが、この紫色は低温浸漬の賜物だろう。アロマにはブルーベリーを感じ、肥えた土の焚きこめる温かみがグラスを満たしている。口に含めばインパクトのある力強さ。エキスのような濃縮感が強い酒を印象付けている。濃くって強いワインの典型。特級エシェゾーらしくないと言えばいいのか。ACヴォーヌ・ロマネらしくないと言えばいいのか。この味わいはまさしく、メオ・カミュゼ節である。オリエンタリックでエキセントリックなこの村の特徴はほとんど感じられないが、極上のワインであることは容易に知らしめてくる。10年の後、このワインが熟成したときに、今一度飲みたいものである。もちろん金が・・・。
 2001年2月11日。神奈川県内某所にて。


<メオ・カミュゼ>
 このドメーヌはドメーヌ・メオとドメーヌ・カミュゼが合併してできたドメーヌである。アンリ・ジャイエの後継者というよりは、アンリ・ジャイエを小作人として契約し、その技を受け継ぐドメーヌとして有名である。その耕作契約の終了がアンリ・ジャイエに引退を決意させたとも言われている。当主はジャン・ニコラ・メオ。ワイナート誌をはじめメディアへの露出度も多く、アメリカで大ブレークしている造り手である。日本でもその評価は高く、市場原理によって押し上げられた価格はちょっと手が出ない。まさにアンリ・ジャイエの影響が価格に反映し、確実にこのドメーヌの評価を高めている。このドメーヌがブルゴーニュのトップ5にランクインする日もそう遠くないだろう。

 今回のテイスティングと前回の村名大会でのアンリ・ジャイエのニュイ・サン・ジョルジュ1998との比較も楽しい作業だ。結論から言えば両者は全く違うワインであった。薄い色合いとグイグイ伸びるアフターテイストがアンリ・ジャイエの特徴だったのに対し、メオ・カミュゼは濃くって強くって第一印象がすごいワインであった。巷の評判とは相反する味わいに敢えてコメントを寄せるとすれば、「ジャン・ニコラ・メオはアンリ・ジャイエの話をあんまり聞いてないぞ」である。同じことはエマニュエル・ルジェにも言える。ただ、ジャン・ニコラ・メオにも哲学があるのだろう。アンリ・ジャイエのコピーに留まることなく、メオ・カミュゼのスタイルを確立させている。それが今回の2本のワインに現れている。いわゆるメオ・カミュゼ節である。アペラシオンの特徴を全面に出すのではなく、ドメーヌの個性を打ち出しているのだ。
 今後もこのドメーヌは注目されつづけるだろう。経済力が許せば今後も追いかけてみたいドメーヌではある。

以上


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