コント・ラフォン | |||||||||||||||||||||||
試飲日 2004年06月24日 | |||||||||||||||||||||||
<ムルソー1級グット・ドール> 抜栓後すぐ使用不明の比較的大振りグラスへサービスされ、ホストテイスティング。むむむ。香りは閉じていて、うっすらと黴臭のニュアンスが感じられ、嫌な予感がテーブルに漂ってくる。レストランで高いワインを注文して、ホストテイスティングの役目を仰せつかった時、従来は儀礼的に済ませていた。しかしある夜の出来事を境にかなりの時間を割いてするようになり、今回はかなり微妙なニュアンスが感じられた。セーフの範囲だとも思われるが、どうだろうか・・・。不快とまでは行かないが、軽度なブショネを意識し、このレベルでの交換は微妙であることを意識しつつも、せっかくのワインなのにこれでは十二分に楽しめないのではなかろうかと思い、とりあえずお店の方に相談してみる。 するとお店の対応は、意外な展開を見せた。彼は「ドミニクに確認してもらうからちょっと待ってて」・・・そう言い残し、ひとつ隣のテーブルへ。「えっ」と思っていると、なんとそこにはこのワインを造ったコント・ラフォンの当主、ドミニク・ラフォンがいるではないか。ビックリしつつドミニクの判定やいかに・・・。 確かに指摘の通り「閉じて」はいるが、ブショネではないという。 造った本人の指摘を受け、一件落着。今度はたっぷり注がれたグラスからは、昨年同じワインを飲んだ時の華やかな印象はほとんどなく、閉じていて、やや何かにマスキングされたようなニュアンスだった。普段はグラスを回さないが、このときばかりは少し強めにグラスを回す。回すほどにマスキングが解かれたかのような印象を受け、この味わいならば欠陥とはいえないレベルに落ち着いた。 それでも香りは依然としておとなしく、うっすらと蜂蜜とバター香が鼻腔をくすぐり、回すのをやめてからは繊細で優雅な味わいをかもし出してきた。ラフォンにしてこの繊細さはなんなんだと思いつつ、帆立貝とあわせると微妙にバランスが崩れ、豚肉とあわせると、俄然うまみが乗ってくる感覚も面白かった。単独では水のごとく滑らかで穏やかな味わいにして、豚との相性はそこからコクを生み出し、優雅で甘美な世界へと誘ってくれるのだ。 不思議な味わいだなあと思いつつ、最後の一杯というところでようやく華やかさもちらつかせて来るところが、いとおかしであった。 そしてドミニクの席からはビオディナミ論争がそう広くない店内にこだましていた。お相手は、同じムルソー村のパトリック・ジャビリエとドメーヌ・ルーロのジャン・マルク・ルーロ。議論は白熱し、身振り手振りと大いに盛り上がりつつ、切りのいいところで会話に混ざらせてもらったりした。 今回は某女史最後のブルゴーニュと言うことで少し奮発し、料理が魚介類だったので赤ではなく、白ワインを選び、訪問したばかりのムルソーということでラフォンを選び、やや疑惑のあるワインだったのでお店に相談すると、本人に出会ってしまった。翌日はドメーヌ・ルーロに行くことになっていたので、いろいろ会話も弾みつつ、お店のスタッフとも仲良くなり、つくづく不思議なご縁だった。 帰り際にボトルにサインをしてもらいつつ、ワインが取り持つ不思議な出会いに感謝である。そして適うことなら、同じワインを飲んで、グットドールの味わいを再確認したいと思ったりするある夏の思い出・・・。 以上 |