ヴァンサン・ダンセール
試飲日 2004年06月25日
場 所    ボーヌ某所
照 明 自然光?
種 類 フランス ブルゴーニュ地方白ワイン
生産者 Vincent DANCER (Chassagne-Montrachet)
Vintage 2001
テーマ 某氏とちょっと贅沢に
ワイン CHEVALIER-MONTRACHET Grand cru

<特級シュバリエ・モンラッシェ>
 
レストランの横にあるカーブから出してもらって抜栓後すぐ使用不明のやや大きめのグラスへ。ここはおいしい郷土料理と偉大なワインが飲めるレストランなのだが、グラスがいまいちなのは価格帯とカジュアルさを考えるとやむを得ないと思いつつ、男二人の宴が始まった。色合いは透明感のある美しいゴールドで、エッジに若々しさを感じいる。香りはとても華やかで、トロピカルフルーツを連想させる香りがグラスから溢れんばかりの勢いで、場の雰囲気が一気に彩られる思いだ。口に含めば、香りとの共通点が多く、2001年にして早くも飲み頃感があり、少しトロピカルに振れすぎではなかろうかと飲みながら心配になったりした。

 これは特級シュバリエ・モンラッシェのイメージからは相当の違和感があるワインである。シュバリエの特徴といえば、鋼のように強い酸と、そこから起因する超長熟タイプの本格派辛口ワインの代表格で、飲み方がもっとも難しいワインのひとつと思っている。モンラッシェよりも急斜面に位置するシュバリエは、鋭角的な印象を持ちやすく、モンラッシェのあっけないほどの飲みやすさに比べれば、ブルゴーニュの硬派なイメージが特徴的なアペラシオン。しかし、このシュバリエはいとも簡単に飲み干すことが出来てしまう。まるでトロピカルジュースを飲むかのごとくで、私のこの畑に対するイメージは音を立てて崩れていくのであった。

 しみじみワインの難しさを感じ、拍子抜けする華やかさに戸惑いながら、うまみ成分もたっぷりで、酸もきりりと心地よいので、ついつい飲み進めてしまった。そして、あと一杯しか残っていないというところで、このワインは急変した。

 凄いのである。今までの親しみやすいナンパな味わいは、一気にエレガントでフィネスを伴った味わいへと変貌したのだ。とても同じワインとは思えず、動転を隠しきれずにいると、ますますワインは成長し、ズシリと重心を下に安定させ、ボリューム感の大きさを感じ、一本筋の通った酸とエレガントな余韻に身を任せずにはいられなくなった。

 この充実感はまさに特級、格あるべしの域に達しており、途方もなく伸びる余韻に、シュバリエの魅力と若きダンセールの成功に脱帽するばかりとなった。そしてこのワインは幸運にも2年前に樽から試飲させてもらっており、そのときの印象がフラッシュバックで蘇ってくるから不思議である。当時はまだ白く濁っていたシュバリエの成長に、時の流れをちょっとだけ感じたりしたのだった。

 いずれにしてもこのシュバリエモンラッシェは、とてつもないうまみを残しながら、グラスは空になっていったのだった。気がつくのが少し遅かった。もしもう一度出会えることなら、たっぷりと時間をかけて大いに楽しみたいところである。


以上
 


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